ある後悔'SIde:Deathsaurus

あの時、ちゃんと言葉を返せばよかった。と、叶わない夢を見る。今はもう、過去の話だ。

「貴様は、現実を見ている――サークルオブライトが浮かれたポンチな集団だとフェイズシクサーズのブラックシャドウから話は聞いていたが…どうやら、お前のような現実を見ている騎士もいるようだな」
デスザラスはそう言いながら、スターセイバーの方を見た。スターセイバーは、俯いたまま月を見上げた。月は二つ、照らされている。何処かの戦場にて、誰かが死ぬ。悲鳴が聞こえる。虐殺を繰り返す。目を閉じ、ただ冷たい、青い炎のような瞳を、デスザラスは見据える。化け物のような赤い瞳で、ただその無言の言葉の意味を。
「――ただ、サークルオブライトが信仰するナイツオブサイバートロン…それが、実在すると思うか?あっても、それが大したことないものだったとしたら、どうするんだ?信仰するものの為に死ぬ――殉教者気取りか?」
「何故私に話を振る――当の本人に聞け」
デスザラスは、スターセイバーのそっけない答えに少し、笑った。此処まで自分の問い掛けに興味を持ってくれる奴は初めてだ。だとしたら、彼は自分にとっての最高に楽しめそうな逸材――と言うより、好敵手…とでも言えるだろうか。サークルオブライトとは遭遇出来なかったが、こいつとはより楽しめそうな戦いが出来る。デスザラスは笑った。彼はスターセイバーの髪結びを乱暴に外す。白銀にも思える、月に照らされるような白い髪を、彼は手を伸ばし――触る。綺麗で、整調に整えられている髪だ。これは面白い。副官のレオザックや、ブラックシャドウの相棒であるブルーバッカス、キルホーンとキルバイソン…歴戦の戦士や優れた人材とは違う、自分と対等に戦える存在が居る。デスザラスは、スターセイバーに手を差し伸べた。

「俺の軍門に下れー―あの男の下らない理想よりも、俺たちの理想の方が現実味を帯びている。お前となら、どんな戦争も勝ち残れるだろう」

だが、スターセイバーは難なくデスザラスの手を振り払った。何も言わず、ただ、乾いた音だけが響いた。

「断る――ダイアトラスだけが、共に生きる存在だ。貴様の様な輩に、手を差し伸べる訳にはいかない」

それが彼の答えだった。スターセイバーの現実は、どれ程残酷なものだろうか。自分は其れが、知りたかった。ダイアトラス。彼の名前は知っている――サークルオブライトの長であり、かの有名なノヴァ・プライムと訣別を果たし、オメガスプリームの英知を授けたと言われている。彼の理想に共感したのか、それとも失望したのか分からない。ただ、スターセイバーは自分と共に道を歩めたのかもしれないのに。と溜息を内心吐きそうだが――。
デスザラスは、スターセイバーの道に共感をした。虐殺を肯定する孫座であり、血塗られた勝利を飾る存在である。だから、自分は共に歩めると確信した。なのに、あっさり断られた。何が、いけなかったのか。ただ、デスザラスは白い髪を手で撫でるのを止め、スターセイバーは無言のままだ。だが、スターセイバーにデスザラスは顎を自らの鉤爪で優しく撫でる。
「――なら、今度会った時、その剣技を高めておくんだな。今度は、本気の貴様と戦いたいと願っている」

あれから、スターセイバーとは出会っていない。DJDとの共同戦線の時に少し考え事をしていた。ターンは彼とは違う。メガトロンを妄信しており、裏切り者を殺す。しかし、今は違う。ディセプティコンを裏切ったメガトロンを殺そうと考えている。

ダイアトラスに手を振り払われたスターセイバーも、こんな気持ちを抱いていたのだろうか?

デスザラスは、考えるのを止めた。



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