空白

彼は自分を殺したいと思っているんじゃないのか?そうではないのか?それとも、ただ虚しさを欲していると言いたいのか?

白い、純粋な――穢れなきその純白の長い髪をぱらぱらとシーツに散りばめ、瘤だらけの手をこちらの手に合わせて向ける。デスザラスはただ、スターセイバーをベッドに押し倒して、こちらを凝視したまま黙っている。スターセイバーはサークルオブライトの騎士である。正しくは、裏切った――と言いたいが。デスザラスからしたら、冷酷で他者を見下す瞳を持つこの男を自分は評価をしている。冷酷な虐殺兵器。プライマスを狂信する男にして圧倒的な剣技で他者を下す。イカれた宗教家。彼も自分を評価をしているだろう。虐殺を行う悪食竜。ウォーワールド指揮官。虐殺と戦争を好むディセプティコン。
「お前は――誰を見ている?ダイアトラスか、それともプライマスか」
「………………」
「何も喋らない――よくわかっている、お前のその性格は――自分はプライマス神に認められている。全ては神による正しい行いだ。だが――ダイアトラスと、俺だけにしか本当の心を開かない」
デスザラスは、スターセイバーの頬を優しく撫でる。鋭い鉤爪の手甲で頬を傷付かないように優しく撫でて、スターセイバーの頬を人差し指で小さくなぞる。デスザラスはスターセイバーは自分とダイアトラス、どちらを選ぶのか。もう分かり切っている筈だ――けれど、彼は答えを教えてくれない。
「神は――居ると思うか?俺は居ないと思う」
「神は、居る。けれど―――この時間を終わらせるのは、勿体ないと思う」
やっぱり俺の事が好きか?と問い掛ける。スターセイバーは何も答えない。彼はダイアトラスとプライマス、どちらかに仕えるのだろうか。騎士として、存在している空白(神)か、それとも共に歩もうと誓った友か。自分は蚊帳の外だろう、きっと。自分も彼も、勝利をもたらす存在として生きている。戦場で死ぬのは自分か彼か――髪留めの紐を手に取り、スターセイバーに話しかける。
「俺は――この戦争が終わったとしたら、きっと用済みなのだろう。けれど、お前は――何をしたい?何を、望みたい?」
スターセイバーは答えない。けれど、青い瞳が自分を映した。
「…ダイアトラスに、会いに行く。会いに行って、それで―――――………」
彼とまた共に、歩みたい。そして、神様に会いに行く。
彼は、自分ではなくてダイアトラスを選んだのだろう。それで良いのだ。この結末はとうに決まっていた。けれど、デスザラスは薄く笑った。
「なら、その目的が果たされたら――俺は、お前の所に行って――ああ、殺してやるさ。お前を、どっちが人殺しの頂点か――決めさせてもらう」
デスザラスの目的は、最初から変わらなかった。けれど、スターセイバーはデスザラスの手を、強く握った。彼を、ベッドに圧し掛かる様に――押し倒す。
「いつ、戦争が終わるのかは分からない、が――お前は、自分が正しい。自分は間違っていない。呪われろ、こんな世界――と言いたいような表情をしているな。けれど、スターセイバー。お前の力は、俺にとって必要な存在だ。俺と一緒に来い」
「――断る。私は、貴様の力など必要ない」
だが、自分はデスザラスの事を評価している。とスターセイバーは内心思っていた。彼と傍に居たい。自分は、彼に認められている――と言う事が嬉しかった。けれど、今はただ――向かう結末を受け入れる準備が欲しかった。
デスザラスは、スターセイバーの白い髪をさらさらと触り、垂らす。静かな静寂と、訪れる夜明け。自分は人殺しの存在だ――と肯定する彼を、デスザラスは嬉しかったのだ。
デスザラスは、親指を彼の唇に当てる。スターセイバーは、優しく彼の指をかじる。流れる赤い血を、優しく舐める。

「……お前は、俺を受け入れてくれるんだな」

デスザラスは優しく笑い、スターセイバーの柔らかい唇に優しいキスをした。



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