それが罪であるならば

騎士であるが故に忠誠を誓う男しか見ないのなら、その男を食い殺したい勢いだった。その男の為に死ぬつもりなら――騎士道などクソ喰らえだ。と吐き捨てようじゃないか。

「何故俺を見ない」
自ら首を絞める様な勢いで、スターセイバーの首筋を掴み、鋭い歯を見せて獣の衝動を抑えるがまま、彼を見上げた。
「そんなにダイアトラスの事が好きか。そんなにダイアトラスの事を愛しているのか――そうか、そうか――ふざけるなよ」
まるで自分が忘れられているような感覚だ。自分ではなく、神と――神に愛されている男だけしか見ない。彼に行動原理を否定されたから、がむしゃらに誰かを虐殺する。自分と同じ化け物が嬉しい。しかし、彼は自分を見ないのが心底腹が立つ。死にたがりの望みなどありゃしない。自分には生者しか必要がない。だが、彼は死人ではない。生き人形だ――そんな理由で彼を生かしているが、自分は彼に殺されたい。本気の彼と戦って殺されてみたい。それが自分の唯一の望みであった。しかし――デスザラスは、怒りを覚えた。ダイアトラスの方しか彼の思いが向いていないのなら、彼の首に見えない鎖をかけるのみだ。誰にも渡さないし、誰にも彼を殺させはしない。
ロザリオを紐ごと引きちぎって毟り取り、床下に投げ捨てた。その行動に怒りを覚えたスターセイバーは拳を振るおうとしたが、デスザラスは一気に彼の腕をへし折った。
「あぐ、あ…!」
腕が駄目になった。と内心思うが――デスザラスは、動かないまま空を見るスターセイバーを見下ろし、鋭い爪で服を切り裂き、胸元を見る。胸元に静かに牙で噛み付き、どろり。と小さな血が胸元を流れていく。
「現実を見ろ――現実を、見ろ。スターセイバー」
スターセイバーはデスザラスを見上げ、怒れる表情をしているデスザラスに対して何も喋らなかった。
「戦争だ。誰かが死ぬ、敵味方も無く――オートボットもディセプティコンも等しく関係なく手段を択ばずこの星が死んでいく。だが、お前も俺も一種の化け物であり、殺される運命だ。その前に俺はお前に殺されたい。そう思っている――死者を見るくらいなら、俺を見ろ」
ぐるるん。と主の危機に駆け寄って来たビクトリーレオが、デスザラスを睨む。
「その勢いなら本気の貴様と殺し合えると思っていたが――援軍要請が入った。又、貴様と戦える事を願っている」
デスザラスはそう言い、戦場の地へと向かい――姿を消した。

「どうして――私と戦いたい。あの男はそう言っているんだ…私と戦っても、意味なんて無いのに」
スターセイバーは、軽めの応急処置をした後に空いた場所で焚火をした。ダイアトラスとは別れた。と確かにそう感じていたが、そんなに本気の自分と戦いたい。と彼は願うのだろうか。本気を出しても、血の雨が降り注ぐだけだ――あまりそんな行為をしたくはない。と内心思っているが、ビクトリーレオは自分の横で居座ったまま眠っている。片腕は骨折したまま、つかいものにならない。デスザラスは、今の自分が気に入らないのだろう――例えば、自分の騎士道とやらが相当気に食わないらしい。ウォーワールドの指揮官である彼と、サークルオブライトを裏切った自分。正反対の存在だ。だが、スターセイバーはダイアトラスに対して、未だに未練を抱いている事が分かった。
髪留めを外し、長い白い髪を片手で整える。冷酷な青い瞳が映す月がとてもきれいに思えてきた。が、血に濡れた赤い花が今宵も何処かで、咲いている所だろう。自らの剣と、獅子の牙で。
「会いたい――と思いたいけれど、出来ない」
ダイアトラスに会いたい。けれど、デスザラスを殺す事が先決だ。彼は、自分を肯定してくれる存在であるのだから。故に、容赦などしない。

「お前に、会いたいよー―ダイアトラス」



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