イデオロギー

こいつがどんな戦いをしてきたのも知らないしこいつがどんな辛い目に遭ったのかを知りたくもないしこいつが自分と同じ化け物である事を想定すると、分かりたくも無い。ただ人殺しの理論を肯定する為に剣を振るい、獅子たる獣を引き連れて他者を引き裂き噛み殺す。こいつが自分と同じ化け物である事を思うと――目を覚ます。銀色に輝く白い髪を垂らし、ウォーワールドの母艦のブリッジに身を寄せている。何時もは彼の傍に居る獅子は居ない。何処かに行ったのだろうか、とふと考えていると――スターセイバーは自分を見上げ、目を閉じた。
彼は両手両足が無い。理由を問おうとしたが物凄い剣幕で睨んでくる――余程言いたくも無い過去を背負っているのだろうか。
「なぁ」と、自分がその手を伸ばす。彼はいつも義手をしている――その手で剣を振るい、他者を殺す。分かる事も無い相互不理解。糸の切れたマリオネットのように冷たい手をしている、人形のように何も動じない男。彼から鋼鉄の手足を奪えば、ただの物言わぬ人形に過ぎない。
「お前は、俺と同じ怪物だ」
「違う」
「違わないさ」
剣で誰かを殺し、獣のように他者を喰らう存在だ。と答えれば、彼は何も言わない。自ら神の加護を受け、それで他者を殺す。与えられた力で殺戮を行う。自分と彼、どちらも同等の存在だ――何が違うというのか?と答えれば、義手の手が自らの腕を締め付けるように力を加える。デスザラスはこちらもと言わんばかりに握り返した。
「化け物だ――本来の俺達は、正義の存在に狩られるべきなんだ。だが――」
俺は、お前だけにしか殺されたくない。誰かに殺されるくらいなら、俺はお前に殺される方が良い。

やはり、答えは出ない――しかし、その手を再び握り返したのが合図だった。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -