Milk

「そう言えば何故、其処までミルクを好む?」
ターンにそう言われ、デスザラスは手に持っているミルクを注いだマグカップを見つめる。何故、ってそう言われても
「昔の友人にな、ミルクを好んだ奴が居てな――いつもそいつに、ミルクをあげていた」
「友人とは?」
「元々副官だった奴さ。今は行方を晦ませてしまった。俺によく懐いていた――他者に何時も怯えていたから、何時も俺と一緒だった」
ターンは手袋をはめた手を自分の顎に宛て、デスザラスに副官なんて居ただろうか?と困惑した。行方を晦ませたのなら――すぐさま処刑対象リスト入りにされるのだが。デスザラスはミルクを飲み、ターンが持っているコーヒーを見つめた。成程古典学者だの音楽家は苦いのがお好きなようだな――面白い。
「そいつは他人と関わるのが本当に苦手だった。だから何時も俺の傍から離れなかったし――剣を振るい、他人を殺すのも厭わなかった。分からないか?」
「…まるで依存症に陥っているようだ」「そうだろう?」
ちょっと、過去で悲惨な目に遭っていたからな――他者が怖がるのも無理はないだろう?
「…まあ、この話は置いておくとしよう、今後の作戦についてだが――」
ターンの話の最中に、デスザラスはミルクが空になったマグカップを見つめていた。友人は何時も、自分に依存していた――しかし、実際は違った。


何時だったか。
「大丈夫か?」「大丈夫ではない」
戦時中、自分も彼もその時代に生まれ、オートボットとディセプティコンに分かれて戦う身だ。だが、実際はオートボットも腐敗している身であり、虚弱体質な彼に暴力や物以下の扱いをしている事が多かった。脱走兵である身故に、いつ捕獲されても可笑しくはない。だから匿った。共に話す事が多かったし、それに自分に特に甘える事が多いが――それ故に、神様に縋る事が多かった。
「包帯の傷は数日が経ったら消えるだろう。今は安静にしていろ――それと、ほらよ」
ミルクが入ったコップを出され、彼はゆっくりと飲んだ。
「…美味いか?」
「………あ、あ」
恥ずかしながらも彼はそう言い、ゆっくり頭を撫でた。何時も鋭い眼つきは、細められ――自分に寄りかかるように眠る。

(――言えないよな、友人がオートボットの脱走兵でしたーなんて)
そもそも相手が悪名高い拷問処刑集団のリーダーだ。言える訳が無い――そう思いながら、ミルクを少し飲んだ。



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