串刺し公と死神

*19話

――――目を疑った。破壊される自分の愛機であるシュワルベ・グレイズ。血だらけになって意識を失いかける自分の部下。
―――今、お前…俺を庇って…?
そんな事実、認めたくなかった。けれども、残酷なほどに、悲劇が訪れた。こんな世界を知りたくなかった。むしろ、知った方が――残酷だった?

「アインーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

悲鳴が、悲劇の終わりを飾った。

元々、自分の母親は火星人の血が流れていた。父親は地球人であり…ギャラルホルンに入ってから酷い苛めを受けていた。半分火星人の血が流れているから。宇宙ネズミ、猿の血を引いているから。と言う陰湿な虐めを。だから、生きている感覚がしないのだった。そんな時に出会ったのがクランク二尉だった。彼は自分を人として扱ってくれたのだ。人種など関係ない。と言ったのはいつ頃だったのだろうか。自分もギャラルホルンの一員として頑張ろうと思ったのだ。

――そんな矢先だった。クランク二尉の訃報を知ったのは。

「…陰で死神と言われている?はっ、俺の祖先の機体だって串刺し公って変なあだ名をつけられてたよ」
「ボードウィン特務三佐の、機体がですか?」
自分はまだシュワルベ・グレイズ…ガエリオ特務三佐の機体にまだ慣れていない。けれど、自分はこの時、クランク二尉の形見であるバッジを持っている…だから、まだ戦えると誓った。
「カルタは腐れ縁で、あいつはマクギリスに一目ぼれってわけだ。多分アルミリアに嫉妬しているんだろうなーって感じるのは内緒だぞ」
「は、はあ…」
「でもな、串刺し公…昔のドイツのヴラド三世のあだ名だったか…敵をやりで串刺しにしたから串刺し公…ひどくないか、これは」
「でも…良いあだ名ではありませんか。私なんて、陰で死神と言われているから…」
「まっ、お互い様だな」

――ああ、アイン、お前は死神と言われたくなくて、ただ、お前の誇りにかけて、俺を守りたかったんだな…。また、誰かを失うわけにはいかなくて…。

ガエリオは、散り行く星々の悲鳴が聞こえたような気がした。
「畜生…」
どれだけ叫んでも、もう彼は帰って来ない。

「畜生っ…!」

それでも、誇りがある限り…人は人で、生きていくしかないのだ。けれども、これを引き起こした引き金はとってもらうぞ――三日月・オーガス!

串刺し公は、何時までも串刺し公であります。だから、生きていくには仕方ないのであります。
これは、昔話。



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