ひかりふる




何度傷ついても

「ライトニング――ボルト!」
アイオリアの拳と、ロキのグングニルの槍が激突する。どちらも引けを取らない威力と言えよう。
「どうした…!?」
サガは、アイオリアの様子が変だと気づく。
「押し切れない…!?」
ムウは、アイオリアがロキの攻撃を押し切れないのだと悟る。何かが、足りないのだろうか…。

『グングニルの槍の前には、子供の遊びに過ぎぬと言う事を――!』
やはり、希望は絶望の前に、潰えてしまうと言うのか!?

「アイオリア!」
「アイオリア…!」
「負けるな、アイオリア!」
11人の光が、アイオリアに被さる。
『この世界は、ロキに跪くのだ!』
いいや――そんな事はさせない。絶望に潰えるのは、希望では無く――最後の願い。
だが、ドラウプニルが光り輝き――奇跡は起きた。
『何!?何だ、この力は…!』
アイオリアは悟った――この世界の声が、祈りの声が――大地の響きが。
「聞こえる…!俺の体に直接響く、この小宇宙は!」
『神の力…!?いや、そんな筈は無い…!』
「神の力では無い…!」
『だとしたら一体…!?』

「これは…人々の力!そして、大地の力!」

「人々だけでは無く、地上からも小宇宙が…!」
「大地に宿る数多の命…その全てが、リフィアさんに答えたのでしょうか」
ムウは、疑問に思うが――それは、奇跡と言えるべき存在。

「聞こえる――大地の声が!感じる――命の鼓動を!この俺に小宇宙を燃やせと言っている!熱く…もっと熱く!最大限まで――限界を超えるまで!」
天を割く一撃ではなく――誰かを守る、拳として。その一撃は――悪を穿つ、一撃となろう。
『ば、馬鹿な…!グングニルの槍が!』
グングニルの槍が砕け――全ての命が、アイオリアに捧げられる。まるで、彼が星になるように。
「この拳に宿るのは――大地に宿る命の輝き!邪神ロキよ、その罪を悔いて、闇へと還るが良い!」
そして――放たれる、希望の光…命の輝き。そして――正義の為の、数多の願いが。


また、流れ星が一つ。
――リフィアは、戻ってきた黄金聖闘士達に感謝の言葉を言う。
「ありがとう…アイオリア、そして…黄金聖闘士の皆さん。あなた達のおかげで、アスガルドとこの地上は守られました」
だが、アイオリアは困った表情をした。
「しかし…アスガルドにはまた、厳しい冬の寒さが戻ってしまうのだな」
だが、ヒルダは心配無用と言わんばかりに告げる。
「心配いりません…アスガルドの民は、この寒さで生き抜く強さを持っています」
リフィアは、彼女の言葉を紡ぐ。
「そして何より、私達には…神オーディーンがついていますから…あっ!」
アイオリアの体が、消えていく――いや、黄金聖闘士達の体が、徐々に消えていく。
「…間もなくじゃな」
「まさか…!」
「オーディーンによって蘇ったこの体も、再び消滅する時が来たようだ」
「そんな…!」
リフィアは、肩を竦めた。でも――彼らが起こした奇跡は、絶対に忘れはしない。
「心残りは、エリシオンで戦う星矢達だ…!こうしている間にも、彼等は…!」
「せめて、我等の黄金聖衣を届ければ良いのですが…」
オーディーンでさえも、出来ない奇跡がある――が、一人の神が、それに答えた。

『私が力を貸そう』

「誰…!?」
リフィアは、その大いなる声に驚愕する…が、かつて――その神に翻弄されしヒルダが、彼の名前を紡ぐ。
「この声は…海皇ポセイドン!」
「ポセイドンだと…!?」

正確には、であるが――拠り所であるジュリアン・ソロに憑依されしポセイドンが言葉を紡ぐ。
『女神の黄金聖闘士達よ…お前達の小宇宙が、我が魂を呼び起こした…。私の力を使えば、お前達の聖衣を、エリシオンへ送る事が出来る』

「かつてこのアスガルドを窮地に陥れた、お前の力を使えと言うのですか…!?」
ヒルダは――その力を拒絶する…が。
「確かにその通りだ…。しかし、ハーデスの野望を打ち砕き…この地上を次の世代に残す為にも、今は力を合わすべきだ…」
「そうかも、しれませんね…」
ヒルダは、アイオリアの言葉に頷く。
「時間が無い、アイオロス…」
サガは、アイオロスに語りかける。
「ポセイドンよ、お前の力を借りよう…!」

『良かろう…』

再び、別れの時が訪れる。それは、夢の終わりかもしれない。
「リフィアさん、我等の役目も終わりました。お別れです」
「ムウ…!」
「後は頼みましたよ」ムウはそう言い、光となって消えた。
「我等も旅立つとしよう」とシャカの言葉に合わせ、童虎は「うむ、先に行っとるぞ」と光となって消えた。
「行こう」「ああ…」ミロとカミュも、光となって消える。シュラとアルデバランも「俺達も」「さらばだ…」と彼等と共に消える。
「正直言うと、もうちょっと街を楽しみたかったな」と冗談を言うデスマスクに
「去り際は、美しくあるべきだ」とアフロディーテは彼に突っ込んで消える。
「行くか」
「うむ…」
サガとアイオロスも、光へと消える。最後に残ったのは、アイオリアとリフィア。

アイオリアは、彼女に――形見である、アイオロスのペンダントを渡した。
「これは…!」
「お前が、持っていてくれないか…」と、彼は切なげに言う。
「アイオリア…!」
リフィアは、泣きそうな瞳で、彼に語りかける。

「お前には…強い魂がある。オーディーンの地上代行者として…必ずや、このアスガルドを守っていけるだろう」

「…っ!」
それは、別れ――夢の終わりを意味していた。
「リフィア――この体が消滅しても…俺の魂は、ずっとお前を見守っている」
「アイオリア、私は…!」
見上げれば…彼の姿は、何処にも無かった。
「私は、貴方の事を…!」

そう――それでも、朝は再び、廻って来るであろう。夜が明け、朝は終わる。


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