believe




信じる事を恐れるな。

「やったか…!?」
童虎は、ロキが完全に消え去った事を信じていた――が、現実はそう簡単に甘くは無かった。ロキは、まだ生きていた。
「無傷だと…!?」アフロディーテは、恐るべき神の力に戦慄をする。
「むぅ…何と言う強さ…!」アルデバランは、ロキの力を思い知る。
「あれが…神の力か!?」シュラは、再び思い知らされる。
『お前達の力がどの程度のものか…この私が知らぬと思っていたか!』
全知全能のトリックスターは、語る。再び、勝利宣言だと言うように。
『むしろ知らぬのはお前達の方だ――このグングニルの槍の恐ろしさと言うものを!』
漆黒の一撃が――解き放たれる。
『先ほどは、小宇宙の共鳴で邪魔をされたが――今度はそうはいかぬ!』
あの一撃を喰らえば――アスガルドに、また大きな被害を齎してしまう!また、自分達も消滅しかねない…!
「まずい、あれは…!」
アイオリアは、グングニルの一撃を阻止する為に、何をしたらいいのか――考えてもキリが無かった。
先に動いたのは、ムウとシャカと童虎とカミュだった――。
各自で防御壁を張るものの、その一撃はいつ砕かれようか分からない。だが、小宇宙を最大限に発揮しないと――被害が広まる前に、何とかしなければならいのだから!だが、それは無残に破壊され――彼等は吹っ飛んだ。

「ムウ達が防いでくれなければ…」
シュラは、起き上がるのがやっとだ。
「全滅をしていてもおかしくない威力だ…」
アルデバランも、頷く。

『ほう…あの一撃に耐えたか?』
ロキは、嘲笑をする。そして――アイオリアに近づく。
『女神の聖闘士というのは…私が考えていたよりは、戦力になりそうだ』
しかし――ロキは、槍をアイオリアに向ける。
『お前達が我が僕となれば――さぞや良い働きをしてくれるに違いない…』
アイオリアは――ドラウプニルを持とうとする。が、ロキに蹴り飛ばされる。
『いや、私にはもう…配下など不要であった』
「アイオリア…!」
ムウは、叫ぶ。

リフィアは――全ての者達の為に、祈る。
この祈りが、届くように。

まだ何も知らない
二人だった
左手で儚く
虚無を弄った
僅かな葛藤が
君の手を縛って
未来の姿を欺く

それは――女神の祈りであった。
「これは…!」
ムウは、驚く。
「血を帯びたように、赤い…この花弁は!」
アイオリアは――女神の愛を知る。そう、これは…。
「聞こえる…!これは、冥界からの、女神の声…!」
赤い、血の花びら――だが、それは希望となり、絶望とも言える…けれども、それは――命を張ってまで、戦おうとする者達への祈り…。

守ることさえ知らないけど
偽りの理想(おもい)でも構わない
生きてみたい
自分を

「女神が言っている…!」
アフロディーテは、大いなる愛を知る。
「立ち上がれと…!」
デスマスクも、大いなる愛を知り――希望を知る。
「女神…!冥界から、我等の為に…この花弁を!?」
ムウは、女神が命をかけてまで――真実の愛と、祈りの声を聞いた。ミロも、また――。
「貴方は御身を顧みず…!」
シャカも――涙をする。
「僅かな小宇宙を振りしぼり…!」

巡り来る
時の中で出会った
君といた僕を信じている
この夢が優しく果てるまで
切り開け蒼い日々を
fight your fate

「その血と共に、これを届けてくれたと言うのか…!」

彼等は――涙する。女神の――城戸沙織自身が命をかけた、その儚くも、美しい願いを。

「ならば――答えねばなるまい!」
アイオロスはそう言い――再び、立ち上がる。

静かな夜に
そっと灯した
言葉だった
冷たい雨のように落ちる
白い月の光の中で

「邪悪を倒し――」
「この地上を守る…!」
小宇宙が、強大化していくのを感じる。それは――最後の願い。

信じること
だけを信じた
眩しいほど強く
夜を照らす光だった
思いを繋ぐよ

『この小宇宙の勢い――尋常では無い!』
ロキは空へと逃げ――叫ぶ。

アイオリアは、願いを込め――叫ぶ。

まだ僕は知らない
哀しみが運命(さだめ)の果てに描く
虚無の姿を

「舞い上がれ!」ムウは最後の願いを込める。
「滾れ!」アルデバランは、最後の願いと共に吼える。
「迸れ!」サガは全ての願いを引き換えに高らかに吠える。
「吼えろ!」デスマスクは一筋の願いと共に声を響かせる。
「燃え上がれ!」アイオリアは願いを込め、叫ぶ。
「響け!」シャカは、大いなる愛と共に語る。
「唸れ!」童虎は、幾千年の願いを込めて吠える。
「轟け!」ミロは――地上の愛と正義の為に。
「燃え上がれ!」アイオロスは、信念と正義の為に立ち上がる。
「研ぎ澄ませ!」シュラは真の正義の為に。
「煌け!」カミュは響く魂の行方を知る為
「狂い咲け!」アフロディーテは全ての地上の愛の為に。
「「「「「「「「「「「「我が小宇宙よ!」」」」」」」」」」」」

そう、全ては――正義と、愛の為に。女神の為に、邪悪を討つ為に。
空へと逃げるロキを――アイオリア達は追いかける。全てを宇宙に変え――光あふれる世界へと変える為に。

「十二人全体が神聖衣に…!」
フロディは、驚く――が、シグムンドは心配そうに語る。
「しかし神聖衣を放てるのは一度きり…!」
ヒルダは――最後の望みだと言うように、願いを語るように言う。
「いいえ――彼等の黄金聖衣が得たのは、他ならぬ冥界より送られし…女神の血」

「女神の血を受け…そして、小宇宙が究極にまで高まりし時、彼等の黄金聖衣は、完全なる神聖衣となるのです」

願いの残像が
ノイズのように降って
古びた思いも見えない

『完全なる神聖衣と言えど――我がグングニルの槍に叶うまい!』
だが、シャカはそれを否定する。
「いや、不可能では無い…!」
サガは、高らかに宣言をする。
「我等十二人が、全ての小宇宙をぶつければ勝てる!」
「皆、行くぞ!」

アフロディーテは思う。人々と触れ合う事で、真の美しさを知る事を。
「地上に暮らす人々の、笑顔の美しさを!」

ミロは思う。カミュとスルトの戦いで知った――正義と正義のぶつかりあいを。
「何者にも惑わされぬ、不屈の正義を!」

アルデバランは思う。ヘラクルスと戦った事で――本当の強さを見出した事を。
「大切なものを守る優しさを!」

デスマスクは思う――ヘレナと出会った事で、掛け替えのない存在を守る勇気を知った事を。
「掛け替えのない誰かを守る勇気を!」

カミュは思う――スルトと戦った事で、響きあえた奇跡を。
「熱き心を通わせる友情を!」

シュラは思う――嘗ての罪を、自分自身が向き合った事を。
「過ちと向き合う信念を!」

童虎は思う――黄金聖闘士と共に戦った、かつての聖戦を思い出させた勇気を。
「心の内に湧き上がる勇気を!」

ムウは思う――たとえ、真実が残酷であっても――希望が残されていると。
「真理を見極める目を!」

シャカは思う――バルドルの優しさと通わせた事で知った、光。
「穢れの無い無垢な心を!」

サガは思う――シグムンドと戦った事で知る兄弟の友情を。
「隔てなく与える無償の愛を!」

アイオロスは思う――光が、必ず闇を打ち払うと言う事を。
「我等は誓う!この全てを未来ある次の世代へ繋ぐ事を!」

『な、何だ…!?この力は…!』
ロキは、永遠に知る事は無い――人々の愛、命を。

「お主の番じゃ」童虎は彼に託し――。
「頼むぞ」カミュは最後の希望を彼に託す。
「決めろ」ミロは彼に全てを託し、
「アイオリア…!」アフロディーテ、シュラ、デスマスクは彼に託し…。
「アイオリア!」童虎、サガ、アイオロスは全てを彼へ。
「これを…!」ムウから、ドラウプニルを受け取る。

それでも君が笑ったから
どうしても捨てられない未来
生きていこう
自分を

ロキは、焦る。
『そこまでの小宇宙を使いきれば…お前の体は、タダでは済まぬ筈!新しく得た筈の肉体と魂を、散らすと言うのか!?』
「まだ分からぬか、ロキ…!我等十二人、一人として肉体を惜しむ者など一人も居ない!」
そしてアイオリアは思う――未来を切り開く、本当の力を。
「喰らえ――魂を未来へ繋ぐこの拳を!」

過ぎて行く時の中で出会った
変わりゆく僕を信じている
この夢が果てるその先まで
切り開け蒼い日々を
fighit your fate

believe/Kalafina


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