ガラスのくつ




その色は、変わらぬ蒼。

「もし、私が道を違えていたのなら――何を知りたい?」
目を閉じれば、居る筈の無いアンドレアスが居た。花弁降りしきる世界の中、フロディは――アンドレアスに問い質す。
「貴方は――一体、どんな世界をお望みだったのですか。平和と言える世界の維持か――それとも、混沌の煉獄の世界か。あなたは、どちらを望んでいたのですかっ…!」
アンドレアスは、フロディにこう答える。

「全てが、笑顔に暮らせる世界」

「笑顔で、暮らせる世界…?」
嘘だ――人々や、神闘士の命を利用してまで…笑顔に暮らせる世界なんて、幻想だ。そんなの――絶対に信じられない。あなたは――消え去った、筈なのに。
「こんな、昔話をしようか」

私は、隣国の出身だった。隣国とアスガルドの戦いが激しくなり――戦災孤児としてアスガルドの神官に拾われた。余所者の私を疎ましく思っていた彼等は、私を冷たく迎え入れた。けれども、私は心優しく――彼等の手助けをした。やがて、私を厄介者扱いしていた彼等には、笑顔が灯っていた。私は、誰かを助ける事が自分の為の生きがいとなっていた。ヒルダ様は心優しく、私を宮廷医師として迎えてくれた。けれども――アスガルドの最初の戦いに、気付きたくない真実を知ってしまった。誰かが死ぬ事で、笑顔を永遠に奪い去ってしまうと言う事を――。私は、親しい者を失った彼等の笑顔を取り戻す為に、豊かで平穏に暮らせる世界を考えた――考えたけども、私は…何も出来なかった。そんな時、ロキと出会ったのは――ポセイドンとの戦いが終わってから1日後の事だった。彼は、私にこう囁いた。
「笑顔を取り戻せる方法を知っている」

「――貴方は、笑顔を取り戻す方法を知っていたから――ロキに利用されてしまったのですか」
「さあ、私には分からない…。ロキに、人格を奪われ…私なのか、ロキなのか――分からない。けれども、フロディは――知っている筈だ」
知っている筈。

「お前なら――アスガルドの民を笑顔にする方法が」
そして彼は、花弁と共に形が崩れさる――そして、笑った。
「本当に、奇跡は――自らの手で、作り出すのだと」

目を覚ませば、焦土と化した景色だった。フロディは――思う。

「――それが、貴方の選択ですか。アンドレアス様」


≪ ≫
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -