真聖輝のメタモルフォシス




十二の盟約、光が照らす闇の軌跡

「どうやら、神闘士で生き残ったのは…我々だけのようだな…シグムンド」
バルドル、ファフナー、スルト、ウートガルザ、ヘラクルス――5人の神闘士が、神に騙され――意のままに操られ、この世を去った。己の宿命を、呪う事無く――。
「ああ、黄金聖闘士達はどうなった…?」
「あの衝撃波の中では、無事ではあるまい…」
「黄金聖闘士達も消え、ロキは遂に、グングニルの槍を手にしてしまったか…」
「もう、我等には――あの邪神に滅ぼされる道しか無いのか…!?」
フロディが、諦めかけたその瞬間。

「いいえ――まだ出来る事はあります」

リフィア――!フロディは、彼女の名前を呼ぶ。彼女は、希望そのものを体感するように――語る。
「私達の残された道――それは、祈る事…」
「祈る…?」フロディは、何かを悟ったリフィアを見る。まさか――彼女は、奇跡を知ったのか!?
「このアスガルドの…いいえ、この地上の全ての命に!」

「この大地に宿る――幾多の命達よ!どうか…このアスガルドを…この世界を…お救い下さい!」

光は、確かに失われていなかった。七つの像が示した奇跡は、此処にある。
光は――散っていった者達を祝福し、
巨人は――正しき力を象徴し、
炎は――闇を打ち払う力となり、
氷は――凍てつく闇を凍らせる光となり、
霧は――全てを纏う風となり、
知恵は――ただ一つの叡智として誇り、
死者は――生きる事を悟り、
勇者は――真の勇者が誰であるかを示す。
そう、闇を照らす、真実の光を待ち望んでいる。誰かが絶望するのではない――そこに、希望があるからそ、奇跡は起こるのだ。

「この力…オーディーンのものではない?!」
フロディは、オーディーンが感じる高貴なる光ではなく――温かな、愛溢れる光を感じ取った。
「リフィアの中に…このような力が…!?」
だが――闇の瘴気が、現れる――まさか、ロキ!
「お前は――!」
「ロキ――!」
ロキは、魔槍グングニルを構え立ちふさがっている。彼女を殺す気だ――いや、自分達死に損ないを消すつもりだ!
『お前には随分としてやられた…』
シグムンドとフロディは、ロキを睨む。
「邪神ロキ…!よくも我等神闘士を騙してくれたな…!」
シグムンドは叫ぶ。あの屈辱は絶対に許しはしない――もう、誰かの力を与えられる訳にはいかない!
「リフィアには指一本触れさせぬ…!」
フロディも、愛する者を救うために立ち上がる。
『雑魚に用は無い――!』
だが、一撃でやられた。これが――グングニルの一撃!
「フロディ…!シグムンド…!」
ヒルダは叫ぶ。が、これで希望は断たれた――これで、リフィアを守る者は無くなった!
『この地上は私の物…』
槍が、構えられようとした、その瞬間――奇跡は起こった。
『グングニルの力が、別の何かの力に、遮られた…!?まさか、オーディーン!?』

「それは違う」

オーディーン像の頂上に立ちあがったのは、アイオリアとアイオロスだった。奇跡は、まだ残っていたのだ。
「アイオリア…無事だったのね…!」
「射手座も、生きていたのですね…!」
二人の乙女の奇跡が、奏でるハーモニー。アイオリアとアイオロスは、ロキを見据える。
『グングニルの力を曲げた…!?有り得るものか!』
だが、アイオロスは叫ぶ。
「信じられるものなら、確かめてみるが良い!行くぞ――アイオリア!」
「ああ!」
二人は、飛ぶ。
『小賢しい…!ならば望みどおり、お前達の息の根を止めてやる!』

黄金聖衣を纏い――駆け巡る。そうだ、兄と共に、戦場を走りたかった。やっと、この願いがかなえられたのだ。けれども、その願いの為では無く――全ては、世界を守る為に。
「気をつけろ、アイオリア…!あれを喰らえば、ひとたまりも無いぞ!」
「ああ…!」
だが、ロキは槍を構える。
『逃げても無駄だ!』
だが――光の壁が、一撃を払う。そしてロキに現れたのは――斬撃と言える刃の一撃。次には凍てつく氷の力――そして、空間の鼓動、輪廻の鼓動が響いた。
『小賢しい…!』
ロキは、それをなぎ払う。
『これは…お前達の攻撃では無いな…いったい、何者だ?』
そのとおり――奇跡は、信念によって生まれるものだ。
「忘れたわけではあるまい…」
「我等黄金聖闘士が…二人だけでは無いと言う事を!」
グングニルの槍が、金色に共鳴をした。
『グングニルの槍が、何かに共鳴している…?あの時、攻撃がそれたのは、これが原因だと言うのか…!?しかし、一体…』

そして――奇跡が、現れた。
正義に輝く、黄金の光。それは――まさしく、黄金聖衣を纏った聖闘士――黄金聖闘士。命を失った筈の――黄金聖闘士!
『黄金聖闘士…!』
ムウは、語る。
「そもそも、グングニルの槍は――黄金聖衣の小宇宙によって、誕生したもの」
童虎は、宣言する。
「十二体の聖衣が共鳴すれば…ほんの僅かであるが…お主の手元を狂わすくらいなら、あると言う訳じゃ」
『お前達は、すでにユグドラシルに取り込まれ――確実に死んだ筈!』
デスマスクは、気楽に言う。
「そいつは早とちりってもんだぜ」
シュラは、デスマスクの言葉を紡ぐ。
「お前は知らぬかもしれんがな――」
アルデバランは、シュラの言葉を紡ぐ。
「アフロディーテには、植物の毒への耐性があるのだ――」
シャカは、答える。
「そう…ユグドラシルに取り込まれたアフロディーテは、他の黄金聖闘士達が完全に取り込まれぬよう…皆を仮死状態にさせていたのだ」
アフロディーテは、勝利を宣言する。
「どうやらこの私を一番取り込んだ事が――お前にとって過ちとなったらしいな」
『…っ!そんな事が…!』
カミュは、叫ぶ。
「邪神、ロキよ――!」
ミロは、吼える。
「この地上は――!」
サガは――そして、高らかに言う。
「我等、黄金聖闘士が守る!」
そして、アイオロスの言葉で始まる、最後の物語。
「行くぞ――!」
遂に揃った、12人の黄金聖闘士。さあ、何も恐れる事は無い――仲間と共に、行こう、ひかりふる世界へ!


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