決意をこの拳に乗せて
神様だって、消せやしない
だが――二人の体に、何も問題は起こらなかった。消滅など――していなかった。エインヘリアルでは無いのか!?まさか――本当に、冥王ハーデスによって復活した操り人形…!?
『…何!?』
それは――一人の神が仕組んだものであった。
『残念でしたね、ロキ――』
そう、リフィアに憑依されし――光の存在であり…大いなる神オーディーン。
『アイオリア達黄金聖闘士を蘇らせたのは――ロキ、貴方では無く…オーディーンだったのです!』
『馬鹿な…!』
リフィアは、語る。
『貴方は私を操り――彼等を蘇らせたつもりでいたのでしょう…しかし、貴方の企てにいち早く気付いたオーディーンは、私の体を新たな拠り所とする事で、自らの意思で…彼等黄金聖闘士を復活させたのです!』
『オーディーン…!この私を、欺くとは…!』
(でも、違う…私は、こんな事を望んでなんかいない。彼等には、魂の安らぎを求めて欲しかった)
これも、運命なのだろうか――リフィアは、思う。
『そして彼等は――死者の兵士、エインヘリアルではありません!』
『…っ!?どういう事だ!』
『それは――オーディーンこそが、為しうる奇跡!彼等は生前と何も変わる事のない肉体と能力を持ち…まさに、生身の体のまま蘇ったのです!』
(でも、本当の奇跡って?神だから――起こる奇跡?けれど、私は…そんなの、奇跡だとは…信じない。自らの道を、進んで選んだのに…)
アイオリアは、自分の体を見つめる。
「では…俺の体は…俺は今…!」
『そうです――アイオリア、貴方は今…生きているのです!』
『オーディーン…!どこまでも、この私を邪魔をするかああああああ!』
アイオリアに放たれる一撃。だが、剣で弾く。
「オーディーンよ…この地上に与えられし命と体…この使命と共に、全うしてみせよう!」
そして彼は剣を投げ――ロキに向かって一撃を加える。ロキは空へと逃げるものの、アイオリアは剣を使い――ロキに飛ぶ。
(感じるぞ…このオーディーンローブ、この体に…神の力が、満ちていくのを…!)
ロキの一撃を、拳で弾く。
「神の力を、小宇宙に変えて――この拳が、邪悪を叩く!」
『オーディーンの力を借りなければ、我が足元にも及ばぬ人間の時…恐らぬに足りぬに――過ぎぬわ!』
無数の光弾が、彼を襲う。だが――ハバルムングでそれを消し――足場に使い、アイオリアは進む。
だが――リフィアは、倒れる。フロディは、彼女を抱きしめる。
「リフィア…!?」
「大丈夫か!?」と彼は、彼女の心配をする。
「大丈夫…」と言っているが――まだまだ、彼女の力は浅はかと言えよう。
「もしや…その体が、オーディーンの力に、耐えられなくなっているのでは!?」
「地上代行者として…私は日も浅いから、ヒルダ様みたいには…いかないみたいね」
だが、彼女は立ちあがる。フロディは「無茶をするな」と言う…が。
「黄金聖闘士を蘇らせたのは――オーディーンの意志であり、この地上を守る為…だとしても、この私が、アイオリア達の魂を弄んだ事に、変わりは無いわ…!」
「リフィア…」
「その償いの為にも…私は此処で、諦める訳にはいかない…!」
――そうまでしても、お前は…奇跡と言うものを…信じないのか。オーディーンだからこそ、為しうる奇跡…か。奇跡とは、神だけでは無く…人だからこそ、為しうる奇跡かもしれないな…。
フロディは、再び思う。そして、消えた筈の彼を、想う。
≪ ≫