へいき、へっちゃら




その言葉は、魔法のように。

ユグドラシルの根の下で――アイオリアと、アイオロスは倒れていた。
一番に目を覚ましたのは――アイオリア。
「…っ!兄さん!」
アイオリアは、アイオロスに駆け寄る。
「アイオロス兄さん!」
エインヘリアルの紋様が浮かぶ――そう、死者の兵士として、蘇った証だ。
「兄さん…?」
「――聞け」
アイオリアは、静かにアイオロスの話を聞く。
「アイオリア…例え、敵の罠に…どんなに醜態を晒そうと…我等聖闘士の立ち場が…そんなもので、決まるわけが無い」
けれども、彼は――あの日の事を話す。

「かつて、逆賊の汚名と共に…討たれながらも、女神の命を救ったのは――私の中の、たった一つの信念」

信念が、あるからこそ――人は、強くなれる。それでも――自分は、信念を曲げずに、戦ってきた。
「信念…?」
「こたにも、同じ…冥界で戦う、若き聖闘士達の為に――我等は、負ける訳には、いかぬのだ」
例え――黒い闇が、太陽を覆い隠しても…光は、決して消える事は無い。

「今となって――やっと知る事が出来ました。我等が、この命で為すべきは…次の世代に…命をつなぐ事!」

そう――若き世代に、我等の命を響かせる。命を響かせ――轟かせる。そう、命は受け継がれていくのだから。
「アイオリア――」
アイオロスは、やっと…真実を悟ったアイオリアに感謝をした。逞しくなったな――そして、成長したな。すると、光が輝き始めた。
「?この反応は…?」
黄金の――腕輪だった。黄金に輝く、光の腕輪。
「兄さん、それは?」
「邪神を封じる力を持つ宝具――ドラウプニル!」

彼が、旅立つ前に――ヒルダから、ドラウプニルを渡される。
「射手座よ――このドラウプニルがあれば、ロキを再び封印する事が出来るでしょう。ただし――ドラウプニルに認められなければ、真の効力が発揮されないと言われています」

それが――ドラウプニル。
「ドラプニルがアイオリア――お前の小宇宙と共鳴している」
そして――最後の決戦に、挑む。さあ、恐怖劇を終わらせる為に――再び、決戦に!

『もう直ぐだ――!もう直ぐ、花が咲く…そして、グングニルの槍が…我が者となるのだ!』
だが、金色の光が――再び輝き始めた。

「ロキ――お前に、グングニルの槍を渡すわけにはいかぬ!」

アイオリアは、再び――決意を秘めて、戻って来たのだ。
『そこまで死に急ぐが――良かろう、ではその命…終わらせてやろう!」
だが――アイオリアは、一撃をかわし――ドラウプニルをはめた拳を…ロキに向ける。
「この拳で…貴様を無に帰す!」
腹に、ドラウプニルの一撃を加える。仰け反ったロキは――再び攻撃をする!
『何だ、今の力は…!』
まさか――ドラウプニル!?
『そんなものを持っていたとは――小賢しい!』
光弾が――三つも。だが、アイオリアは――其れを避け、ライトニングプラズマを放つ。しかし――ロキはライトニングプラズマの一撃を一閃で消滅させる。
『ドラウプニルの直撃を受けなければ――貴様の攻撃など!』
流石のアイオリアも、苦戦をする。
『どうした…?逃げてばかりでは、折角の武器も、型無しでは無いか!?』
アイオリアも、諦めない。だが、よじ登って来たアイオロスは、叫ぶ。
「気をつけろ、アイオリア!」
アイオリアは――直撃した!
「身の程を知らず――愚かな人間よ」
敗北――いいや、それは――希望の反撃の第一歩!
アイオリアの目の前には、バルムングと――オーディーンローブ。

『アイオリア――』

その声は、リフィア本人だった。
『アイオロス――此処まで諦めず、良く戦ってくれました』
「リフィア、生きていたのか――!」

「何だ、この大いなる小宇宙は…!?」
エインヘリアルと戦っていたシグムンドも、それに気づく。
「遂に目覚めたか…アスガルドの偉大なる神――オーディーン!」

『まさか――オーディーンだと!?』
ロキは、驚きを隠せない。
『如何にも…我は、アスガルドの神――オーディーンなり』
「リフィアが、オーディーン――」
アイオリアも、言葉を黙るに尽きる。だが、その言葉を紡いだのは――フロディだった。
「驚くのも無理は無い…リフィアこそが、ヒルダ様の代わりに――オーディーンの力を授かる、地上代行者となったのだ!ウートガルザは兼ねており、アンドレアスの正体が、邪神ロキである事を知っていた。しかし、オーディーンが新たな地上代行者を目覚めるまで…時間がかかる。その時まで、何れ必要となるオーディーンローブから、ロキの前から隠さねばならない…。ウートガルザは一度、自らの命を絶ち…エインヘリアルとなる事で、体内にオーディーンローブを隠し持っていたのだ」
これで――良かったのだろう、ウートガルザよ。お前の進むべき未来は断たれたものの…お前の信念は、自分が受け継いだ。けれども――今は、自分よりも、アイオリアの方に託す。自分の力では、ロキを倒しきれないと感じ取った。アンドレアスの正体に気付けなかったのも、自分の責任を感じながらも。
「アイオリアよ!今お前は…神オーディーンの意思により、アスガルドを守る戦士として選ばれたのだ!」
「この俺が…オーディーンに!?」

「アスガルドの者では無く――お前が選ばれた事は口惜しい限り!しかしアイオリアよ!神オーディーンに認めたとあらば、お前はまがう事無き真の戦士と言えよう!」

もう、迷いは無かった。もし――この戦いが終わったら…あの時の決着を、つけたい。
『アイオリア――この地上に、グングニルの槍を復活させてはなりません、今こそ――この剣と共に!』
アイオリアは、剣を取る。白銀の剣は――黄金へと変わる。

「オーディーンよ…その意志、獅子座のアイオリアが、確かに受け継いだ!」

始まりの終わりへ、本当の終わりの始まりへ。


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