誰が為に鐘は鳴る




希望は打ち砕かれない、何故なら人の奇跡があるからこそ、生きるのだ。

「――まだ、終わりではない!」

希望は、降り注ぐようにして現れた。ロキは『お前は…!』と憎々しげに、言う。
「遅くなって、済まない…」
そうだ、あの時――嘆きの壁で、13年間…待っていた、その――待ち望んでいた声は…!
「に、兄さん…!?本当に…アイオロス兄さんなのか…!?」
そう、本当に――射手座の、アイオロス本人なのだから。
「逞しくなったな――アイオリア」
13年間つらい思いをして、それでも――めげずに、挫けずに頑張って来た。兄のように、強く…優しき聖闘士になる為に。
「兄さん、俺は…俺は…!」
「たった一人となりながらも、良くぞ此処まで戦い抜いた…!」
だが――もう、一人では無い。
ロキは――忌々しい因縁の相手を見、『サジタリアス…生きていたのか』と吐き捨てる。
「あの時――聖衣こそ、失いはしたものの、ワルハラ宮の者に救われた…そして、傷の手当てを受け…ポラリスのヒルダから、全ての真実を聞く事が出来た
――アンドレアスの正体が、邪神ロキである事を!」
そうだ――兄は、何時も真実を知っている。けれども、真実は――自分で見つけなければ、意味が無いと言う事も。
『私の正体に、気づいていたか――ヒルダは』

『その通り』

凛々しき女性の声が響く。それは――まさに、地上代行者に相応しい凛とした声であった。
「この声は…!?」
「――ポラリスの、ヒルダ!?」

『ロキ――お前の企みは、全て最初から分かっていました。そう、封印から解放されたお前は…宮廷医師アンドレアス・リーセの体を拠り所とし、この地上での完全復活の時を伺っていました』

そう――神は、実態を持たない。増してや、かつてのラグナロクで肉体を失ったロキは――肉体なしでは、活動する事は出来ない。禍々しい邪神を封印した太古のアスガルドの民が残していった、壺…。しかし、地上支配を企もうと、無垢な心が優しげな人間の体を利用した。
『やがて女神とハーデスの戦いが始まり――地上を我が者に出来ると絶好の機会と考えた。しかし――このアスガルドには、オーディーンと言う邪魔者が居る。そこでロキ、お前は冥界で散った黄金聖闘士の力を利用しようと思い付く。その太陽に匹敵する聖衣の力で――ユグドラシルの実から、破滅を齎す恐ろしい力を生み出す事が出来ると――』
「破滅を齎す、力――!?」
アイオリアは、まさか――嫌な予感がした。

『アスガルドに伝わる、究極の神器…グングニルの槍!』

烈槍が覚醒するまで――あと少し。


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