ラピスラズリ




抗う鼓動がこの胸の奥
熱く燃やしても

自分の話をしよう。自分は、裕福な家系とは言い難い――ある家の中で生まれた。赤子の産声に、母親らしき女性は「この子を産めて、良かった」と言った。自分は、そんな家庭で生まれたのだ。
幼い自分に、母親は子守唄を聞かせてくれた。彼女は、昔話をした。
光と成す家庭に生まれ育った彼女は、悲運にも――影と成す家系である男と恋をした。けれど、報われぬ恋心。光と影は寄り添ってはいけない――けれども、彼女は男と恋をして…自分を産み落とした。けれど、彼女は笑った。
「笑っていれば、いつか――光と影も、関係無く…生きていける。だから、生きていれば…きっと、希望が見出せるのかもしれないから」
笑っていれば、いつかは奇跡が起こる。だが――光と対成すその一族が――日の光を出、自分の存在は――影でしかなかった。
光と対成す家柄を知ったのは、自分が17歳に育った時。自分は、あのフロディと言う青年の存在を知った。暗殺術を束ねる自分の家柄と、剣術と拳を束ねる彼の家柄。光と影を成す、相反して相克する運命。けれども――自分は、ある事実を知った。これが知れ渡れば――世界は、終わるだろう。
(我は――死ぬが、宿命と悲しみを持って再び生まれて来る。きっと、こんな世界を知らなくて良かったと叫ぶだろう。せめて――この世界が、崩れ落ちないように…!)
自分は、短剣を使って自分の胸に突き刺した。

「ウートガルザァァァァァァァァァ!」
フロディは――ウートガルザに向かって、剣を投げつける。リフィアを失った悲しみを――怒りに変えるように叫んで、それは狂想曲の様に、紡がれる。自由自在の剣を彼は避け――ダーインスレイヴの一閃をフロディに向け――放った。フロディは、ブーメラン状に返って来た一撃を喰らい、倒れる。
「我がダーインスレイヴは…血に飢えた狼の牙――何所までも獲物を追い続ける」
「得体の男とは思っていたが――まさか、四方や、貴様の家系が…我が家系と対をなす者であったとはな!」

「我等の血筋はいわば…光と影。日の光の元…アスガルドの脅威を打ち払うのが貴殿ならば――決して人の目に触れる事無く…アスガルドを守護するのが、我が宿命」

だが――光と影、対をなすと言うのならば…せめて、自分の手で葬らなければならない。
「その二つが戦えば――!」
「何れかが滅びゆくのが必定!」
フロディはウートガルザに剣を投げ――飛び去る。だが、ウートガルザはダーインスレイヴを構え、叫ぶ

「アリュシナシオン・ルー!」

血に飢えた白銀の狼が召喚される――それらは、フロディに襲い掛かったのだ!
「一度味を知った狼は――その血肉を喰らいつくすまで攻撃を止める事は無い」
フロディは狼に苦戦をしていた。氷月を喰らう魔狼ではなく――赤い月を飲み込む狼其の物だ。
「その程度の力では…アスガルドを守る事など、到底出来ぬ。己の弱さを恨み――滅び逝くが良い」
だが、フロディは狼達を蹴散らす。こちらにも、負けられないプライドと言うのがあるのだから!
「私は――負けぬ!」
そうだ――彼女の言葉には、嘘偽りなど無い。リフィアは――アスガルドの未来を信じ、散って行った。あの時、何も出来なかった無力さを呪ったものの…彼女を苦しませた罪を、今度は償う番だ!
「貴様を倒し――そして、アンドレアスに問い質す!このアスガルドに起こっている真実を!」
だが、ウートガルザは瞬間移動をし――フロディに拳をかます。
「甘い!無恥――そして、愚かなり!」
「っ…!どこまでこの私を侮辱すればっ…!」
そして――ウートガルザの一撃に、フロディは空高く…ユグドラシルから落下した。

落下し――漸く、リフィアの真意がハッキリと感じ取れたのだ。
笑い声、悲しみ、叫び声、怒鳴り声、雪の音、風の音――。
(聞こえる…!これがリフィアの言っていた――アスガルドの大地の声!)
此処で、死ぬ訳にはいかない!ジークシュベルトの名を呼び――剣で根を突き刺し――勇者の間に戻る。

ウートガルザは、突如舞い戻ったフロディの一撃に苦戦を強いられた。
(まさか――貴殿は、本当に…?)
ああ、これが…守護する者の覚悟。と言うべきか。
「リフィアは言った…!このアスガルドの大地を守りたい…!あの言葉に偽りは無かった!」
だが…彼は、刃をフロディに向ける。
「今の貴殿は――他者の言動や一滴の劇場に揺れているに過ぎぬ!その様な覚悟など…たかが知れている!」
いいや――これは、自分が、フロディに気付かせる為の…手段に過ぎない。だが、フロディは――叫ぶ。

「今は違う――!自分の心と、魂の声に従い…そして自分の信じる道を…私は進む!」

「ならば、言おう――遅きに過ぎぬと!アスガルドを真に守るのは――この私!」
剣を弾き飛ばし――神闘衣を半壊させる。
「安心されよ…アスガルドはこの私が守る…!?」
だが、フロディは――必死の思いなのか、拳を…自分に向ける。

「違う…私が守るのは…リフィアが守りたかった、アスガルド…!それが、リフィアを守り切れなかった、私の償い!」

(そうか、ようやく…分かったのか…貴殿は。この世界も、悪くは…無い、な)
そうだ――世界を知りたくなかったのではない…。運命を、知りたくなかったのだ。


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