孤独のオクターブ




輝くは闇夜の炎。
導かれるのはいつだって、漆黒の闇。

「神…!?馬鹿な…!?」
シャカは、驚愕を隠せない。
「――見えたのでしょう?…そう、貴方になら…見えた筈です」
シャカは、バルドルを見る。
「にわかに信じられないのも、無理はありません。しかし――こうして私の中に、神の力が宿っている!」
ルーンの力で、シャカは衝撃を受ける。

目を見開くと、それは猛吹雪の世界だった。
「私はこのアスガルドの中でも――特に貧しい村の中で生まれました」
アスガルドは、厳しい掟に縛られ、その極寒の世界で貧困に陥る者もいるのは少なくは無い。けれども、全ては地上代行者――オーディーンの使命の為に。けれど――掟の前に、命を散る者も居た。
「村人は皆、病に倒れ…働き手は私だけ…」
運命は、残酷なものだ。現実に打ちのめされようとも、誰も助けてはくれない。
「しかし――体も幼く、弱い私がどれ程頑張っても――村は豊かになるどころか――」
そう、逃れられぬ残酷な運命を、悟るまでは。

涙を流す。けれど、彼は運命を祈るしかなかった。
「僕は…どうして、体が弱く生まれて来たのでしょう…!神様は何故――僕に何も与えてくれなかったのですか…!?」
古い聖堂に倒れ、死に近い場所にいた――その瞬間。

『バルドルよ――おまえは誰よりも優しく、美しい心があるのではないか』

「そんなものがあっても――村の人々は救えませんでした。せめて、もっと――丈夫な体があれば…!」

『お前が望むならば、授けよう…この世の何も、傷つけられない…強き身体を!』

像が発光し――目を覚ませば、ルーンの証が両手に。

「幼き私の声に――答えてくれたのです!神…オーディーンが!」
シャカは――本当に、それがオーディーンなのだろうか?と感じた。人の心の弱さに付け込む――巨悪な何かが。
「以降――私は、絶大なるオーディーンの加護により――」
バルドルは――自らの勝利の魔剣で、自らを傷つける。
「――何たりと傷付かぬ体になる事が出来ました」
「確かに貴方は、最も神に近い男と呼ばれている黄金聖闘士…しかし私は…!」

「――神」
傍観者は、再び囁く。

「さあ――お分かりでしょう?貴方に勝機はありません…諦める事です」
しかし…シャカは、ある疑問を抱いた。その力を――何故、人々の為に使わぬ?!

「解せぬ――人が神になるなど、有り得ぬ事!」
「分からぬ人ですね…これほど力を目の当たりにして…まだ、そのような事を…」

すると、景色が一変する。
「これこそ――紛れもない、神の力!このアスガルドを創造された――偉大な最高神、オーディーンの力!」
しかし、シャカも負けじと叫ぶ。
「ならば――お前は、何故此処に居る!?」


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