ナラクノハナ




願うのは人々の幸福。
蔑むのはいつだって、数多の虫。

「六道輪廻から…逃れた…!?いや、奴は――あの場所から、動いてすら居ない!」
だが、バルドルは語る。
「シャカ…あなたが如何に強い力を持ち…そして神に近い男と言われていようとも…この私に傷付ける事は出来ません」
不死身の神の名を持つ彼は、そう語る。だが、そう不死身と言われていようと――そう完璧に完全な不死身などありはしないのだ。
「この私を惑わすか…!去れど其れは無謀と知れ…!天空破邪…魑魅魍魎!」
魑魅魍魎が彼に襲いかかる。だが、それは――自然の摂理と言えようが、何と言おうが――。
「ユル!」
戦乙女が剣を持ち――魑魅魍魎を退治する。戦乙女(ヴァルキュリア)と言えるべき使い魔。
「アンスール!」
剣から破邪の一撃が加わる。だが、それは破邪の光と言えようか?
「カーン!」
防御壁をするが――バルドルは、余裕の笑みを浮かべる。然程余裕なのか、不自然とは言えないであろう。その途轍もないオーラが広がり――シャカは、戦慄にも似た思いをする。
「まさか…お前は!?」
「漸く気付きましたか…」

「――神!?」


一方、死者の間では――童虎が守護者であるウートガルザと激闘を繰り広げていた。リフィアが操る死者の兵士が、彼に襲いかかる。
「どれ程束になろうとも…無駄じゃ!」
一撃が、死の兵士を打ち倒す。
「リフィアよ――やはりお主には秘密がある様じゃのう…ん?お主…リフィアではないな…!?」
だが、ウートガルザのダーインスレイヴが襲い掛かる。楯で受け止めた童虎は、彼の仮面の表情を伺う――何か、見覚えのある感覚がする。まさか――死の香りか?
「貴殿の相手は我――!」
「っ…」
止めには、アンドレアスの声がリフィアに届いた。

『リフィアよ…最後の使命を果たすのだ…』

虚ろな目をしたリフィアは、その場を後にする。
「待て…!」
「行かせはせぬ――」
まさか、お主の仮面の素顔は――!?

ムウは、ファフナーから反撃を受けていた。ファフナーはぜえ、ぜえと息切れをしている。だが、このオーラは…?!
「その、小宇宙は…!?一体…!?」
「これぞ新たな…オーディーンサファイアの力!」
オーディーンサファイアが禍々しく光る。闇の胎動とも言えようか、その力は…!
「このオーディーンサファイアは、ユグドラシルから得られる力を…何十倍にも増して我らに与えてくれる…適合を得られる人間を探すのに――多少の手間はかかったがな」
「適合する人間…!?まさか――あの時の?!」
やはり、あの人体実験は…この為だったのか!ファフナーの嘲笑に、ムウの怒りは隠せない。
「そうとも――おかげでいいものが出来た」
ムウは、拳を握り…。
「人々を犠牲にして…!己の力に――するなど!」
神聖衣になろうとした、その瞬間――。

「――待ちな!」

見知った声が、響く。
「お、お前は…?!」
「デスマスク!」
デスマスクだった。
「お前だな――ファフナーとか言う野郎は!」
怒りに隠せない表情をしている。お前だけは――絶対に許しはしない。
「黄金二人がかりか――良いだろう!俺が――」

「――積尸気冥界波!」

ファフナーが、気づいた瞬間に――辿り着いたのは冥府の穴と言える所だった。
「っ…何だ此処は!?」
「黄泉比良坂――あの世の入り口だ!」
「ぐっ…!」
『…デスマスク!』
ムウの声が聞こえる。
「先に行け――ムウ!」
『――しかし!』
「こいつにはちいっとばかり借りがあってな…心配すんな――俺も直ぐに行くよ」
『…分かりました。此処の像は任せます』
ムウの言葉に、デスマスクは「おう」と語る。けれども――ファフナーに向かい――目を見開く。それは、決意を秘めた者の証でもあった。


≪ ≫
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -