哀哭せよ、所詮、我等は神ならざる身




美しくは佇まい。
歪むのはいつだって、見えない心。

シャカは――光の間・アールヴヘイムで、謎に包まれた神闘士のフレースヴェルグのバルドルと対峙をしていた。再起をし、立ち上がったシャカに立塞がる――銀色の髪をした男。
「大人しく像を破壊するつもりは無い――か」
鷲の巨人を模した神闘衣を着た、赤いルビーの瞳をした青年は、フフッとほくそ笑む。それは、死神にも似た嘲笑だったであろう。死神ではなく――まるで、神にも似た悪戯だとしか思えないのだが。
「ならば――お前を討つ。女神の名の下に」
「果たして、出来るかな?」
銀色の髪を持つ死神は、再びほくそ笑む。まるで、運命を見透かしているように。
「愚かな…このシャカを相手にした時点で、梵鐘なる己に気づかぬとは…自らの死地を選べ――六道輪廻!」
バルドルは、輪廻に飲み込まれる。
「六道とは、人々の善悪の業によって、赴きそむ六の界の事――」
神とは言えず――神にならず。
「地獄界――堕ちた者は未来永劫果てる事無く――苦しみ悶える」
一つは地獄に落ち、堕落した逆さ十字を得るのは?
「餓鬼界――体は骨だらけになり、腹は膨れ上がり――死肉さえ喰らう、貪りの日々が続く」
二つは貪欲なる世界に落ちたのは、誰だったか。
「畜生界――相手を殺したければ殺し、喰らいたければ喰らう、獣の世界」
嗚呼、獣は誰だったか――忘れはしない。
「修羅界――血と殺戮、休む間もなく永遠に戦いが繰り広げられるのだ」
この戦いも神が仕組んだとしても――か?
「人界――喜怒哀楽、全てにまみえ、善にも悪にもなりきれない…不安定な世界」
この世界は、不安定であろう。けれども、不安定だとしてもか?
「天界――喜びの世界と言われるが――いつでも畜生、餓鬼、地獄へと転がり落ちる最も危険な場所――」
さあ、釈迦の掌に踊れるか。
「さあ、選べ――!お前はどこで死にたい?!」
バルドルが選んだのは――。
「私の居るべき場所は――――アスガルドだ!」
だが、彼は仏陀の掌に踊らされているにしか過ぎない。掌に踊る彼は、シャカの運命の選択を聞かされる事になる。
「仏の御前ではお前など貧小な猿に過ぎん――何所まで行けど、逃れる事は不可能」
「…成程、乙女座のシャカ…聞けば貴方は、聖闘士の中でも、最も神に近い男と呼ばれているとか――中々面白いものを見せてもらいました」
彼の剣ティルフィングが――空間を切り裂く。それは――勝利を呼ぶ剣と言われているともであろう。仏陀を切り裂き――現れたのは、神々が住む世界――アースガルドの世界。天使達――戦乙女に囲まれたバルドルは、勝利の剣を振るう。シャカは、戦慄する事になる…。
「馬鹿な…!?」

「女神の名の下に私を討つ――そう言っていましたね…しかし…」

「乙女座のシャカ――如何に彼とて倒す事は不可能…そう、神だけは」
傍観者は、再び語る。


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