聖絶




溢れる緑の息吹は全ての生命に祝福を与え、
輝ける蒼の清流は全ての恩恵を与える。
そこは花が咲き、小鳥囀る、命に満ちた約束の地。

――ある書物の一文より。

スターライト・エクスティンクションを放ち、現れる兵士達をなぎ払う。今の自分は、アフロディーテ、ミロを失ってご立腹と言えよう。
「道を開けて下さい――仲間を失った今の私に、貴方達を相手にする心の余裕はありません」
そうだ、彼等の命を弄ぶ――アンドレアスに、一撃を加えなければ腹が立つと言えようぞ。

「ええいお前達、いい加減にせんか!」
本当にしつこい奴らだ。と童虎はアルデバランを背に――襲い来る敵達を見据えて語る。騙されているのに気づかないのか!?こやつらは!と利用されている兵士達を見て、思うも――利用されていると気付かずに、何も知らずに戦っている兵士は、アンドレアスの為に戦っている。それは…最後の心構えと言えるであろう。

「分らぬ奴等だな…ユグドラシルによる小宇宙の吸収が止まった今、何人纏めて来ようが――お前達黄金聖闘士の敵ではない!」
シュラは高らかに叫んだ。
「例えこの命が尽きようとも…アンドレアス様に仇名す女神の聖闘士をユグドラシルに侵入させるわけにはいかぬ」
こちらもこちらの正義があると言うのであろう。だが、リフィアが先陣を出て――叫ぶ。
「皆さん――どうか、此処は引いて下さい!このアスガルドの未来の為にも、貴方達がこんな戦いで命を失ってはなりません!」
だが、アイオリアは「下がれ、リフィア」と彼女を宥めた。
「アイオリア…!」
「今の奴等は…アンドレアスを信じ切っている。何を言っても無駄だ…」
「じゃあ、どうすれば…!」
するとアイオリアは、リフィアに代わって先陣を出た。

「奴らが向かって来ると言うのなら――打ち払うまで!」

相も変わらず、頭を考えない奴だ。とシュラはこの時思ったが――言わないでおこう。と心の中に閉まった。兵士達は戦う構えを見せない、それは、正義を信じているアイオリアの姿を見て、死を覚悟したのであろう。

『リフィアの言うとおりです』

若い男の声だ。それは、優しげなハーモニーを奏でるように――いや、どこか、狂気を感じさせるように聞こえる声だ。リフィアは、彼の声を聞き、「この声は…」と覚えがあるようだ。
「アンドレアス様!」
兵士の誰かが言った。あの――アフロディーテを葬った、アンドレアスの声だと言うのか。シュラは、その声をしっかりと耳に焼き付けておいた。

『此処から先の戦いは――既に貴方達の手に負えるものではありません』
『しかし心配は無用です――既に打ち倒した黄金聖闘士同様、残りの者も必ずや撃退させる事を約束しましょう』
『我らには――アスガルドに誇る、神闘士が居るのですから!』

道をあける兵士達に、童虎は少し鼻を鳴らして語る。
「ふっ…アンドレアスと言う男、随分と余裕じゃのう」
これでユグドラシルに突入する事が出来る――アルデバランと共に、道を進んだ。

「奴め――何か策を用意していると見て良いな」
シュラの言葉に、アイオリアは「行こう」と先に進む。


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