銀狼の刃




仮面の道化、それを演じても――世界は変わらないけど。

アンドレアスは、魚座の聖衣が手に入った事に大満足していた。フロディは、主の真意が未だに分からない。だが、仕える主には忠誠を誓わなければならない。それが、神闘士の家系に生まれた者の宿命。
「…アンドレアス様」
「フロディか」
部下の報告曰く――黄金聖闘士はグレートルートに向かっている。グレートルートを破壊すれば厄介だ。今すぐに排除しなければ、アンドレアスに支障が来るであろう。このグルンブルスティのフロディが彼等を排除しなければ…更に厄介な事になるであろう。だが、アンドレアスは不要だ。と答えた。
「これからが楽しくなる」
彼の言う事が全く分からないが――何故だろう、不思議な感じがするのは。

夢を見る。アイオリアの尊敬なる師であり――兄であり、自分の憧れの人であるアイオロスを自らの手で下す夢を。あまりにもリアルで、凄惨な夢。それでも、自分は正義の為だと信じていた。教皇の命令で下した。けれども、真実は違った。サガによって下された審判は、残酷なほどに最悪だった。アイオリアに、謝らなければならないと思っている。自らの心の影は、深い深い闇となって現れる。

(そうだ、俺は…)
ユグドラシルに目指している最中、兵士に発見されて捕まって近くの基地に連行されて――それから、長い時間が経ったのだろうか。小宇宙を感じた。同じ仲間であり、同志でもあったアフロディーテが、命を散らした…。デスマスクも、小宇宙を爆発させて…そうだ、ユグドラシル!
――シュラは目を覚まし、牢屋の檻を見る。エクスカリバーでは衝撃音で兵士に気付かれては不本意だ。なら、どうすれば良い?考えている矢先に――。
「鼠…?」
灰色の鼠が、牢屋を潜り抜けて現れた。ふと、見ると持っていたのは何かの鍵。どうやら、牢屋の鍵のようだ。
「一体、誰が…?」

『…そこの聖闘士、彼等の元へ行きたいのだろう?』

低い声がする。一体誰だ。シュラは立ち上がると、その声の主らしき人物は周囲には居ない。
「お前は誰だ?」
『貴殿を手助けする者だ』
「手助け?俺を?」
『その通りだ。貴殿は、アンドレアスに忠誠を尽くす兵士によって牢屋に囚われている。だから、我が手助けをしようと思っているのだ』
「待て、名を名乗れ――お前は、一体。それに、何の為に俺を手助けして」
『能書きは良いだろう。早く、貴殿の仲間の元へ急げ。それが、我の為にもなるし、貴殿の為にもなる』
「…………」
助けてもらったのは有難い。けれども、早くアイオリア達の元へ急がなければ。誰だか知らないが、彼に感謝をし――兵士に気づかれないように脱出を行った。

シュラが居なくなった後、ひょっこり現れたのは仮面を被った男だった。
「――光でも、影でも関係無い。貴殿は、それに気づかないままだ――だが、我は影でもなく――自分のやり方で貴殿に真実を託させてもらう」
仮面の男――ウートガルザは、拳を握り、語った。


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