舞台裏でこそ物語は踊る




偶然と愛情は紙一重。

偶然なのは分かっている、けれども、全てを断ち切って一人闇の中生きていたのだから。けれども、悪意は偶然にも自分に付いて来たとしか言えないであろう。それでも、夜明けが来る事を恐れているのは――死を望んでいるから?

運命は、偶然にも匹敵する。けれども、夜明けを望んだ世界は悲願にも劣る。悲願が愛憎、愛憎が悲哀、けれど、腐敗した天の恵みは、誰にでも夜明けが来ない事を信じる。

「本当に、正義を貫いて死ぬとでも?」
それは、冥王ハーデスと女神アテナとの戦いが始まる聖戦の時に遡る。純蒼の髪を靡かせ、冥衣を纏ったカミュは――永遠の光が来ない夜を見る。月明かりに照らされ、それは狂った夜を示す。
「嗚呼、我々が逆賊の汚名を着せようとも――真実を偽りにし、女神に真実の愛を示す」
聖剣を纏いし男は、そう語る。永遠に日が来ない、光が来ない暗闇の世界。一切の希望を捨てよ――いいや、希望は捨てない。決して、譲れない愛が此処にあるのだから。
(ミロ…)
済まない、お前を裏切ってしまうのなら――敢て、覚悟を決めよう。例え、彼を刺し違うのならば。

「それがお前の決心か」
スルトはそう言い、カミュを見た。豊穣の光を齎すユグドラシル内部――スルトは、ヤーヘイムを守護しているカミュの話を聞いていた。掛け替えの無い友人ミロの事、十二宮の戦いの事、聖戦の事――スルトは、カミュの話を聞いて興味を持つふりをしていた。
「友人ミロ、お前の弟子氷河、そして――信じるべき道。確かに、私の胸に響いた」
「っ…」
カミュは黙り込み、何も言えずに居た。けれども、スルトはカミュに釘を刺すように語る。
「例え、お前が自分を犠牲にしても――私は、全てを断ち切って一人生きている。だが、お前には、どうしても死なせて欲しくは無いのだ。分かって欲しい――カミュ」

(信じるべき道を違えてしまったのだろうか…私は…)
それでも、道を進むしか道は無いのだ。

シャカと再会したムウは、考える。
アフロディーテが死ぬ間際に教えてくれた、ユグドラシルの真実。それは、あまりにも狂気に満ちた内容だった。ユグドラシルは人々の生命を吸収し――自分達黄金聖闘士の小宇宙を吸収する。
(アフロディーテ…)
あまり身勝手な行動をするなと咎めようとしたのだが――彼のスタンスが許せなかったのだろう。小宇宙の吸収を止める方法はただ一つ。神聖衣の力で大いなる根グレートルートを破壊するしかない。
「これを持っていくが良い」
シャカが渡したのは――女神を殺した短剣だった。忌々しい。これのせいで、全てが始まったのだ。教皇に成り済ましたサガが、赤子だったアテナを殺そうとした短剣。この短剣は――聖戦の際に、再び垣間見えて、彼女は自らの手で命を落としたのだから。
だが、これを持っていかなければ――事態は、止まるどころすら、悪化するのだから。

深い霧。アイオリアは道を進む。
「俺から離れるな――」「うん」リフィアを連れて、霧が満ちている道を進む。どうやらユグドラシルの大いなる根――グレートルートは近いようだ。ムウ曰く、ユグドラシルのグレートルートを破壊しない限り、自分達の本来の力を最大限に発揮出来ない。ユグドラシルには何かしらの魔術か何かがかけらているか…本来の力か。
アルデバランと童虎、ミロはムウの説明を聞く。
「そのグレートルートを破壊すればいいんだな…」
ミロはそう言うも、ムウに答えを遮られる。
『はい…しかし、今の私達ではグレートルートを破壊するのは不可能です。確実に破壊する方法…それは神聖衣』

「聖衣に秘められし究極の力――神聖衣」

「神聖衣…」
アイオリアは、フロディとの戦いの時に実感をし…。
「あれが、神聖衣…!」
アルデバランは、ヘラクルスの戦いの時に断片的だが――その実感を感じた。その力は、未だに恐るべき力を感じたような気がしたのだ。


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