Calendula




命の輝き、命の糧、それでも俺は。

急がなくては、最悪の事態は――避けなければならない!
「アフロディーテ!ヘレナ!」
その治療を行っている場所に行けば…爆発が起きた。見れば…アフロディーテがヘレナを担いでいる。アフロディーテが苦戦をする筈が無い!まさか…その次の瞬間だった。

「デスマスク…ッ!―――――逃げろ!」

アフロディーテは、植物の触手に身体を貫かれていた。起こりたくもなかった、悲劇。起こってしまった、悲劇。
「アフロディーテ――――――!!」
叫ぶも、彼は植物に取り込まれてしまった。ヘレナが倒れ、デスマスクは最悪の事態が起こってしまったと自覚する。

(アフロディーテの小宇宙が消えた…!?)
一方のムウは、彼の小宇宙が消えた事を感じ取った。まさか――嫌な予感がする。だが、振り返ってはならない…。アイオリアもまた、散りゆく者達を思ってはならない。これは、聖戦と等しいのだから…。

「――あれ程、痛めつけても尚、女一人を助けようとするとは」
黙れ。声が枯れようとする位に、叫びたかった。彼は、必死で自分の想い人を…!
「…お前が、やったのか」
デスマスクはそう言うと、アンドレアスは尚平気な顔で話す。
「…ん?君は確か、蟹座のデスマスク?」
「お前は…ぶっ殺す!」
「まさか聖衣無しで戦おうと言うのか?」
「良いか――俺には、聖衣なんて…」
死ぬ覚悟だった。全てを諦めていたデスマスクに、奇跡が起きた。聖衣が、反応を示したのだ。
「こんな俺と…もう一度、一緒に戦ってくれるのかよ!―――キャンサー!」
奇跡は、自らの手で作り出すものだ。いや、奇跡を、起こさせてくれ。希望を、示してくれ。それが…最初で最後の償い!積尸気冥界波を放つが――アンドレアスは、樹の触手で防いだ。まさか…人間ではないのか!?いや、彼は触手でデスマスクに攻撃して来たのだ。
「うぐぁぁぁぁぁ!」
アンドレアスは、デスマスクを嘲笑する。
「弱い――私の知る限り、君は黄金聖闘士の中で一番弱い」
弱いと言おうが、何と言おうが…お前だけは許さない。
「確かに、そうかもしれんが…一度は、この聖衣にすら見放された事だってある――」
「最低だな」
アンドレアスはそう言うも、デスマスクは皮肉に言った――が、だが。と彼に怒りを向ける。
「そうでもな、このアスガルドでヘレナと会ってよぉ…あいつ、病気だってのによ…兄妹食わすのだって大変だってのによぉ…――笑ってたんだぜ!力になりてぇと思ったんだよ!何も出来なかった――この俺に!」
「その通り…君は何も出来ない。生き返る意味など、無かったのだ」
本当に…アンドレアスの言う通りかもしれない…その時、気を失っていたヘレナが、息も絶え絶えに彼に話しかけた。

「…弟と、妹達に伝えてよ…力を合わせて、頑張るんだよって…」

生きるのを諦めた乙女の涙。その涙に――彼の勇気が目覚めた。
「ヘレナっ…!生きるのを、諦めるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
生きる意味と、希望を与えてくれた彼女を、死なせる訳にはいかない!デスマスクは、希望に、高らかに叫んだ。
「ほぉ…」
アンドレアスは、彼の聖衣の変化に気づいた。興味深い。あの計画を進めるには丁度良い――それは、まだ真実が明らかになっていない。
「吼えろっ…俺の、小宇宙―――――!」
渾身の一撃が、触手を打ち破った。あと一歩遅ければ、自分も大怪我をしていであろう…。アンドレアスはそれを高らかな目で、見ていた。
「ふふふ…これが別の何か…、まさか…直接見られるとは思いもしなかったな…」

一撃を加えた後、ヘレナに駆け寄る。だが、彼女は――命の灯を、終えようとしていた。

「あのお金、あんただったんだろ…ありがとう…ね、本当に…ありが、と…う…」

彼女の言葉は、これで最後だった。けれども、慟哭しか――聞こえなかった。慟哭が鳴り響く、星空の鎮魂歌を…。


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