夏ノ雪




さようなら、愛しき日々。さよなら、私。

ギャンブルで運が良かったのか悪かったのか。ギャンブルでお金を稼いでいる最中に、ふとデスマスクは思った。何だ、今日に限って人が少ないじゃないか。と思う――。
「何かよ〜、人少なくね?この街の親父は?」
すると、関係者らしき男性は、ある発言をした。その発言に、デスマスクは妙に気になっていたのだ。
「アンドレアス様が、タダで病院に診てもらえるようにしてくれたから――腰を治しに行っているんだ」
(ふむ…治し、なあ…)
アンドレアスと言う地上代行者は前に怪しいと思っていたが、彼が優しい所を持っているのは思わなかった。けれども、何か――妙に引っ掛かる気がしたのだ。デスマスクは、それに気づかぬふりをして。

ヘレナは幼い兄妹達の世話をしている最中に、何か音がした。幼い妹達は、その音に気付いたのか叫ぶ。
「あ!お酒臭い袋の人だ!」
「また、お酒臭い袋の人だ!」
(あっ…もしかして…!)
ヘレナがドアを開けると、置いてあったのは銀貨。生活出来るほどに大量とは難しいが、この量で苦しい家を持ち直す事が出来る。誰が置いていったのかは知らないが――もしかしたら。
「誰だか分らないけど…本当に有難う御座います!」
でも、この恵みは…感謝しなければいけない。そう思ったヘレナを見て――デスマスクは、一人立ち去って行った。自分に関われば、彼女まで戦いに巻き込んでしまう。そんな事をしては…自分の責任だ。
「ねぇ、お姉ちゃん。お酒臭い袋の人…誰かな?」
「私はアンドレアス様だと思う」
確かに、アンドレアスは心優しいお方だ。けれども、それよりも――何時も自分を心配してくれるあの人の方が心配なのだ。
するとトントンと音がした。妹達が「きっとお酒臭い袋の人だよ!」と言うが――彼女に、悲劇が待ち受けているとは思わなかったであろう。
「…こんばんわ」
悪蛇の名を持った、狡猾な男が現れるまでは。

蟹座の聖衣を見つめるデスマスクは、妙に不機嫌だった。それに気付いたアフロディーテは、デスマスクに話しかける。
「アイオリア達は今朝早く出発したそうだぞ」
「良かったのか、あいつ等と行かなくて」
「今はまだ賑やかなこの街を離れる気にはならないからな」
「意外に気が合うな〜」
何時ものヘレナの場所に行けば、彼女の姿は見当たらなかった。デスマスクは様子が可笑しいと気付き、近くの男にヘレナの居場所を問う。
「よぉおっちゃん、ヘレナの奴今日も店出してねぇのか?」
「…みりゃ、分かるだろう?」
ヘレナが店を出さないわけがない…デスマスクは、何かがおかしいと気付き、彼女の元へ急ぐ。嫌な予感がする…当たらなくて、良い方がよかったのだが――遂に、最悪の事態と言う訳か!

「コホン…ヘレナ!えーっと…何かよ…おっさんが店出してねぇから心配しててよー」
彼女の家に急げば、姉が居ないと騒いでいる妹と弟達の姿だった。
「お姉ちゃん…何時帰ってくるの!?」
「っ…!?」
頼む、悪い予感が当たらないでくれよ…!


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