パラドックス




過去の悲しみが吹き荒れる。それでも、自分は自分の正義を信じよう。

カミュとスルトが廊下を歩いていると、怒りを少々含んだ声が聞こえた。

「ワザとトドメを刺さなかったのでは有るまいな」

白銀の神闘衣を着た男――シグムンドは、そう語りながらカミュに釘を刺すような言葉を呟いた。スルトが「止せ、シグムンド」とシグムンドを宥めても、少々短気な性格である彼の怒りを止める事は出来なかった。彼はこう言う男だ。とスルトが深く少々ウンザリしながらも、シグムンドの言葉が止まる事は無かった。
「スルトの親友何だか知らないが、俺はお前を信用していない」
信用していない。カミュは、シグムンドの言葉を寧ろ無視しながらスルトと共に歩いて行った。
「カミュ、許してくれ。あいつの弟は青銅聖闘士との戦いで殺されて――聖闘士を恨んでいるんだ」
アルファ星ドゥベのジークフリート。ヒルダに仕えていた忠誠深き騎士の如く戦う神闘士だった。彼の弟は一番の自慢だった――のだが、彼が殺されてから、性格は一変したとスルトから聞いていた。
「お前も同じだろう」
かつて聖闘士として共に戦った友であるお前を、裏切る事はしない――あの悲劇が、お前の環境を取り巻く全てを変えてしまっても。
「俺はお前との約束を違える事は無い」
「――信じていとも」
だが、スルトは少し疑問に思っていた。

「――ただ、あの時…君の凍気を込めた一撃が私の炎と相殺された時、蠍座――ミロは、致命傷を免れたのではないかと思ってね」

「スルト様!蠍座が――こっちに来ています!」
兵士の報告を聞いたスルトは、少し考えがあるようで――カミュを、ミロの所に向かわせると決めた。

「スカーレットニードル!出て来いカミュ…!」
俺は仲間の裏切りが何よりも許せない――あの時、お前が聖闘士を裏切り、冥闘士の一員になり…アテナを殺しに来た事が!俺はまた、盟友に裏切られるのか!?
ミロの叫びは、吹雪と共に現れたカミュが来た事で、打ち消された。


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