焔葬




炎の力は、悲しき思い出を生み出す。
氷の力は、情熱のように羽搏く。
二つの力は、相反するように動く。

猛吹雪の中、マントを着た一人の男が道を歩いている。だが、同じマントを着たもう一人の男とすれ違ったと気付いた時、男――ミロは彼の正体に真っ先に気付いた。
「雑魚から聞き出した情報は本当だったようだな…」
男の正体はミロの親友であり、同志でもあった水瓶座のカミュであった。同じ女神の聖闘士であり、共に戦った身でもあった。これで心強い仲間が増えた――そう思った瞬間、マントが凍り出し、ミロは真っ先に戦闘態勢に陥った。
「カミュ、一体何を!?」

「まだ分からぬか」

甲高い声が響いた。ミロが声が聞こえた場所を振り返ってみると、現れたのは鹿を模した神闘衣を着た緋色の髪をした男だった。ミロは恐らくこの地を守る神闘士だと分かっていた。分かっていた、のだが――納得出来ないのが、カミュがなぜ自分を攻撃したのか。であった。
「我が名は神闘士エイクシュニルのスルト。水瓶座の黄金聖闘士カミュは、共に戦う我が同志だ」
不可視な発言をするこの男が言ったのは、カミュが敵の仲間だと言う事実だった。其れに反感を覚えたミロは、カミュに怒りを隠せなかった。
「カミュ、一体何故裏切った!!」
何故裏切ったのかは分からない。だが、これだけは言える。洗脳されているのではなく、まるで自らの手で神闘士の手に落ちたような感覚が生々しく聞こえるのだから。
「ダイヤモンド…ダスト!」
凍てついた拳がミロを襲う。凍てつく氷とは違い、灼熱の炎がミロを襲った。氷と炎、まるで正反対の兄弟のようであり、太陽と月――其れほどの強力な絆が固められているような感覚がする。
「お前が知る必要は無い…此処で、我が炎に焼き尽くされるのだからな!」
スルトの炎の剣、カミュの氷の拳を同時に受けたミロは――真っ先に、崖から落下し…川に落ちた。
「(まだ生きているのか…しぶといな)カミュ、此処は一旦退くぞ」
「ああ、分かっている」
スルトはカミュを連れ、撤退した――が、カミュはどうしても、スルトの本意が分からないままであった。


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