Rise your flag
声の限り、声の限り叫んで。
「ほれほれどうした〜!」
童虎に急かされ、タングリスニのヘラクルスと戦う事になった。パワーにはパワー、だが…負けてはいられない。アルデバランはそう思い、牡牛座の聖衣を装着した。ヘラクルスはいがみ合い、大剣を振るう。
「こ、こいつ…身動き一つもしねえ…!」
ヘラクルスは驚きながらも、アルデバランを睨んだ。
触手に体を絡められ、ムウは身動き一つ取れなくなった。ファフナーは「さーて、実験を始めるか」と言っているが、何の実験だと思ったその時には――!
「ああああっ!」
電流が走り、エネルギーを絡め取られていた。
「貴様、戦わないのか!」
ヘラクルスは煮え滾り、アルデバランに怒りを露わにしたが…。
「戦う理由もない、アテナからは私闘を禁じられている」
「ぐっ…!」
この…戦わない主義者め…!アンドレアス様から聞いていたが予想以上の堅物ではないか!だが、彼の頭にはある良い考えが思い浮かんだヘラクルスは――それを利用する事に決めた。
大剣を振るい、衝撃波を――アルデバランに向けるのではなく、近くに居る二人の子供に向ける。それに気付いたアルデバランは、子供達を庇った。誰もが勝利を確信したと思っていたのだが――。
「この私が命乞いをするのを期待しているのですか?見当違いですよ…うあああっ!」
「――うっ、この小宇宙は…?」
目を覚ましたアイオリアだったが、すべての事態を予測出来ずにいた。するといきなりリフィアに抱きしめられ、驚いたアイオリアだったのだが。
「アイオリア…!」
「リフィア…何処へ行ってたんだ…?」
困惑した表情をしたのだが、リフィアは何故か焦っているような表情をしていた。
「大変よ…貴方の仲間が…!」
仲間――もしかして!?
衝撃波がアルデバランにぶつかり、雌雄を決したと思ったヘラクルスであったが――子供二人は無傷、アルデバランは子供達を庇う為にその場に立っていた――が、無傷では済まなかった。
(お主…その弱き者への気遣いと優しさは相変わらずじゃのう…かつてのハスガードもそうじゃったが…これも何かの縁じゃろうな…)
少女は「カッコいい」と言っており、アルデバランは無傷ではいられなかったが、呟く。
「…俺とした事が、すっかり忘れていた…」
「あー、楽しかった。礼を言わせて貰うぞ…」
楽しげなファフナーとは別に、ムウはククッと笑いが止まらなかった。
「いいえ、私の方こそお礼を言わせて貰います」
「何だ…と…?」
流石のファフナーも開いた口が塞がらなかった。ムウは立ち上がり、話を続ける。
「貴方も同じで私も自分で楽しまないと気が済まない――タチなんです」
ムウの笑みが、弾けた瞬間であった。
好戦的なヘラクルスの前でアルデバランは再び戦いの構えをする。
「戦う意味などそんな考えなどやはりやめる――小ざかしい事は他の奴に任せる!」
ムウは笑みを浮かべながらも、強大な小宇宙を放つ。
「滾る血の求めるままに突き進むのは其れで良い」
「「その先に答えは自ずと現れる!」」
「スターライトエクスティンクション!」
星屑の小宇宙がファフナーに襲い掛かり、ファフナーは壁に激突した。
「グレートホーン!」
雄牛の猛進がヘラクルスに襲い掛かり、ヘラクルスは倒れた。
「ライトニングプラズマっ!」
壁が突如破壊され、現れたのはアイオリアとリフィアだった。助っ人か。ファフナーは最悪なタイミングだな!とこの時思った。
「獅子が目覚めたようです――このままだと貴方を始末するのも考えますが如何します?土下座して礼を尽くします?」
「大丈夫かムウ!?」
アイオリアは獅子座の聖衣を装着している。このままでは分が悪い。ファフナーは「帰る」と言い、撤退して行った。
ヘラクルスは再び立ち上がるも、この借りは必ず返す…と決意を露わにする。
「また会おうぞ、タウラス」
疲労困憊、アルデバランは敵を撤退しつつも、小宇宙が吸い取られているのは確かだった。童虎はふと、違和感を感じた。
(――ハーデスが今、星矢達と戦っているのなら、誰が我々を蘇らせたのかのう…もしかすると、あやつが…?)
だが、その違和感は――後に、重大な事実を明かしてしまうのを童虎はまだ、知らない。
≪ ≫