偽物の夜に誓え反逆者




この拳は何のために?それは、物語の引鉄を弾く為に。
 
アルデバランはこの時思った。もし、誰かが自分達を蘇らせたのならば――其れは何者かの意志であり、運命ではなかろうか。闘技場に行ってみると、対戦相手を吹っ飛ばす古参であり聖戦を生き抜いた聖闘士――天秤座の童虎が大暴れと言わんばかりに活躍していた。
「老師…!」
童虎はアルデバランを見てニカッと笑っていた。

「ハッハッハ!此処で暴れていたら誰か来ると思っておったわ…さっ、飲め飲め!…むっ、飲まんのか!?」
「今は飲む気は…」「何じゃ、つまらん奴じゃの〜!?はぁ、全く」
酒を飲んでいる童虎はお前本当に聖戦を勝ち抜いた伝説の聖闘士か?と内心思っていたが、それは秘密の話である。我々は死んだ筈だが?何者かに命を蘇らせられたのでは?何者かの意思なのでは?と疑問を口にしたが、童虎は態度が不真面目であり、「で?」と言った。流石のこの態度に腹を立てたアルデバランは怒りそうな発言をした。
「貴方ほどの聖闘士がこんな所で遊んでいるとは」
だが、これだけは思うのだ。何故、生きているのか?本来、死者を蘇らせるのはタブーに当たる…ハーデスが我々を蘇らせたと思うのは到底在り得ない。一体何故?誰がこんな事を?その疑問は予期せぬ人物が現れてから急転する事になる。
「黄金聖闘士、出て来い!」
神闘士らしき新緑の鎧を着た巨漢の男が闘技場に現れたのである。歓声が巻き起こり、アルデバランと童虎はその方角を見た。
「良いぞ戦ってやる――アルデバランが」
何故に!?とアルデバランは疑問に思うが、童虎はさらりと言った。
「前に神闘士に不覚を取った借りを返す良い機会じゃろう?」
ああ…神闘士のシドか。とアルデバランはそう思った。彼は既に亡くなっていると星矢達から聞いている。その挑戦、乗ろう。

「うわあああああああ!やめろ…やめてくれええええええええ!」
聖堂から悲鳴がする。その悲鳴に驚いた兵士は、ファフナーの何時もの実験が始まったのだと思った。ニーズヘッグのファフナーは恐ろしいほどにマッドサンティエスト染みた実験を行う。前には若い少女が犠牲になったと聞いていた。
「ファフナー様、酷くないか…?」
「シッ!聞こえたらヤバいだろ」
すると後ろに現れたのは不気味な表情を浮かべた神闘士だった。兵士は本人であると分かり切り、情けない悲鳴を上げた。
「貴様達も実験体にしてやろうか…まあ、その前に――ターゲットが来たようだな」

(どうやら物静かなようだが…恐らく、この禍々しい小宇宙はあの聖堂の中に…)
冥闘士とは違う、恐ろしくも禍々しい雰囲気。其処に現れたのは――間違いなくファフナー本人であった。

「ニーズヘッグは黒い大蛇と呼ばれ、ドラゴンとも言える魔物だ。名前は「死体を裂くもの」の意味であり、世界樹ユグドラシルの根の一本が届いているニヴルヘイムで、この根に噛り付いている。
エッダ詩「巫女の預言」では死体達の身体を吸い、翼で空を飛び、死体を運ぶ…」

全く情けない、これが黄金聖闘士だなんて片腹痛い。とファフナーはそう思い、倒れているムウを引き摺って自身の実験室に急いだ。これも全てアンドレアス様にご報告をする為だ。だが、この時ファフナーは思っていなかった。実力と頭は自分が上だと思っていても――上には上が居る事を。


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