あなたの選んだこの時を | ナノ

アナザー・ディアレスト

シュトルツの屋敷――ダークケルベロスのレボルトと火の魔神と融合し、レアメタル化したダークワイバーンのクルードとの激闘で焼け落ちてしまったのだが。
『どうして、其処を選んだ?』
「クルードが火の魔神を呼んだこの地ならば、魔神が何か手がかりを教えてくれるだろうって」
『…………そうか。だが、此処には何も無い。全て、灰へと変わってしまった。焼け落ちてしまった。不死鳥が火の中から蘇るが如く、焼け落ちてしまったのだから』
皮肉な事に、焼け落ちた時にはシュトルツがクルードとリーベルトの手で救出された。フレイドはクルードの幽閉に納得いかないペルブランドの命を受けて、彼にワイバーンボーンを渡した。レボルトの配下である彼であるが、実際はペルブランドの部下なのだ。ルークは「そうか…」と言い、フレイドを見た。
「君に聞くが、始まりの魔神の摂理に変わり――翔悟が理そのものになった。だが、翔悟の記憶は忘れ去られてしまった。良いのか?」
フレイドはコクリと頷くと、瓦礫を見た。瓦礫の中には何かが埋まっているのだろうか。お宝か――其れとも、危険な何かなのだろうか。フレイドはハァ。と言葉にならないため息をつくも、自分が仕える神に代わって、まだ若い少年が理そのものになるとは思わなかった。だが、フレイドはルークの可能性を信じていた。彼ならば、人間の可能性を信じているのだろう。すると彼は、瓦礫の中から何かを発見した。
(これは……)
硝子の結晶で出来た、ペンダントだった。どうやらロケットであり、開けてみたら――何かの家族の肖像だった。
「何か見つけたのか?」
フレイドがルークにロケットを差し出すと、ルークは驚くべき表情になる。
其れは、竜神一家の肖像だった。欠けた母親――竜神智恵が居た。ずっと、長年の間――翔悟に会う事すら出来なかった。だけど、彼女は最後まで彼の事を大事に思っていたようだ。ルークは、いまだに無言のままである。
『……翔悟の事が大事なのか』
「ああ、だが、家族が翔悟の事を忘れてしまったのは、寂しいさ…」
翔悟の姿が映っていた。家族でさえ彼の事を忘れてしまったのは、悲しい話だ。ボーンで戦う術を無くした代わりに、翔悟が居なくなるなんて耐えられなかったのだ。
『手掛かりは、これしか見つからなかったが――、貴方の両親が心配をする。一度、メルボルンと言う場所にまで転送してあげよう』
「ああ、有難う」
転送するフレイドとルークを、崖の上から傍観している人物が居た。エメラルドの髪をした男は、不敵な笑みを浮かべ――姿を消した。

「………う、ん………」
ルークがベッドから起き上がると、フレイドが立ったまま寝ていた。ダークバット――蝙蝠である故に、立ったまま寝るのは朝飯前のようだ。
「フレイド、今日は手掛かりを――探しに行かないか?」
目を開けたフレイドは、ルークを見て少し、真面目な顔をした。何時もの通り、掌に文字を描く。
『今日は、何処に行くのか?』
するとルークは、言わんばかりに語る。
「―――決まっている。ネポスだ――フレイド、再び転送を頼む」
フレイドは『分かった』と頷き、彼を再びネポスへと送り出した。

――ネポスの広場にて。
「フレイドか?」
ダークリヴァイアサンの適合者であったペルブランドは、自らの部下であるフレイドがお客人を連れてきたのだと気付いて評議会の席から立った。ダークベヒモスのバーリッシュはまんざら何も言わずにフレイドを見ている。
「…フレイド、そのお客人は…」
フレイドはペルブランドに訳を説明すると、ペルブランドは頷いた。

ペルブランドに案内をされ、辿り着いたのは小さな屋敷だった。ペルブランドは「フレイドがお前の為に、手掛かりを用意したと言っている。頼むぞ」と、彼女は用件があるからと言って去って行った。
「フレイド、此処は一体――?」
フレイドはふるふると首を横に振っている。すると彼は、本棚から一冊の本を取り出した。
「これは…?」
見てみると、文章がびっしりとネポス語で刻まれている。フレイドが判り易い様に地球語で翻訳して紙に羽根ペンで書いてくれたのだ。

『この理は、不完全なものである。不完全とは言え、理を知る記憶は未だに失われていない。理を知る者は、ほんの一握りしか居ないのだ。だが、気付いてほしいのは真実である。真実を忘れるな――理を知る者よ』

(理…?)
理と言えども、理はもしかして翔悟の事か――?ルークはそう思い、パラパラと本を捲った。気になるページをルークは発見したのだった。
「これは……始まりの魔神とボーンが描かれている…?」
『最初は、理を知る者は真祖と言われていた。真祖は、始まりの魔神――理と会話をした。真祖は、理と会話をして、天使に祝福されしこの星に、種を埋め込んだ。やがて、真祖は一人の女性と恋に落ち、眷属を生み出した。これが、天使の末裔なのだ』
(天使の末裔――ネポス・アンゲリス――)
ルークには、天使の末裔――ネポス・アンゲリスとは言え、何かが引っ掛かったのだ。ルークは溜息をつき、本を閉じた。
「フレイド、此処は…?」
すると彼は掌に文字を描いた。
『私の別荘』
「成る程、納得した」とルークは頷き、フレイドは未だに無言のままだ。するとフレイドは、突然レイピアを具現化させる。ルークは何者かの気配を感じ取ったのだ。すると、ルークはこう語る。

「―――誰だ?」