あなたの選んだこの時を | ナノ

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真実を、追求したいのなら。分かって欲しい。これが貴方の、優しさだから。
世界線と言うものがある。決して交わる事のない、パラレルワールド…枝分かれする世界と言う意味である。だが、もし――『理』が、全てを書き換えたとしたら?世界線も、過去も、未来も愚か――宇宙そのものを書き換えたとしたら?

最初は唯の運命の悪戯だと信じていました。けれど、私にとっては淡い恋心でした。貴方が恋しいのです。けれど、其れでも私は必死に足掻いて、必死に足掻き続けて―――悲劇を変えようと信じていました。けれど、貴方やクルード様が囚われの身になり――私は一人、置いていかれたのだと実感するのです。嗚呼、もし、こんな悲劇が変えられたのだとしたら――。

冷たい水溜りを足で跳ね、ぱしゃり、ぱしゃりと音がした。唯、私がルークに伝え切れていない伝言を話す為に。だけど、私はルークの思いに応える事が出来なかった。それは、辛く悲しい事実。また、友達になれるのなら…と言うルークの思いに応える事が出来なかった私の罪。だから、私はきっと、疲れているのだろうと実感する。誰もが願った、安らぎの場所。理想郷、光と闇、風と炎と水と大地、雷と自然。8つの安らぎが響いている最中、其れでも私は貴方を助ける為に此処に来た。けれど、安心して眠れぬ夜が響く。イドを狩らなければ、決してこの世界に平穏など訪れる事が出来ない。其れは、辛く悲しい戦い。
ボーンファイターは、血塗られた戦いを強いられて来た。竜神翔悟も、ルークも、タイロンも、アントニオも、ギルバートも、あの二人も、グラディスも、バイズも、ドロッサスも、クルード様も、シュトルツ様も、レボルトも、ソキウスも、セミリアも、ウルーラも、ベントーザも、セルペンスも、ラケルトも、カーバリオも、バーリッシュ様も、リーベルトも、グストスとモースも、そして――彼女も。
決して平穏だとは呼べないその戦いと信仰の果てに訪れたのは辛い結末。でも、私は信じていた。人が勝ち得たものは――愛なのだと。私は、これからも辛い戦いを強いられるであろう。だが、私にとっては――私にとっては、絶望とは、何なのだ?

「絶望とは、人に裏切られ、最後には惨たらしく死ぬ結末の事」
眼帯の男は言う。
「絶望とは、死に至る破滅に追い込まれ、決して変わる事の無い悪夢の事」
ターバンの男は言う。
「結局、絶望と言うのはな、覚める事のない悪夢だ。これが、現実だ」

眼が覚める。それでも、竜神翔悟が消失した世界は――空しいだけだ。彼は太陽だ。人を明るくさせ、皆を照らしてくれる希望の光だ。だけど、その彼が居ないと言うのは、辛い話だ。
ルーク、貴方の辛い思いを、漸く受け止めた。遅すぎたのだ。けれど、時は取り返しのつかない事態になった。失いたくない、二度と、貴方を――そして、彼女を、翔悟を。
掌に描く、空間の紋章。決して交わる事のないラインは――光を描いた。希望のラインを描く為に、私は光を見つけ出した。

『レボルトとソキウスが此処に来た理由を、教えて欲しい』
「分かるだろう?俺とソキウスは、一人で二人、二人で一人。相棒なんだ」
レボルトとソキウスはそう言って共に歩みました。レボルトの部下グラディスも、ベントーザも、自らの意志で此処に来たのです。私は、ルークに伝えなければいけない事がありました。もし、この世界がパラレルワールドだとしたら、別の私が存在しているのかもしれません。『私』が、『わたし』であるのならば。もし、この理自体が『偽り』だったとしたら。きっと世界は本物も偽者も関係無くて、誰かが心を想う度に、人は強くなれるのです。と感じたのです。
かつて、私と同じ『使い』の者は言いました。
『君は何故、始まりの魔神に従う?其れが全て偽りだとしたら?其れが無意味だとしたら?』
私はふるふると使いの者に否定をしました。けれど、その使いの者は――別の世界へと跳んで、世界を監視しに行きました。私は心に誓ったのです。必ず、ルークを、翔悟を、そして、大切な者を助ける為に――自らの意志で此処に来たのです。

大切な者を助ける為に、そして、理を絶つ為に、此処に来たのです。


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