あなたの選んだこの時を | ナノ

地球ぎ

適合者達は、ボーンに適合したら戦う運命にある
ある者はダークボーンとなり、エクェスとなり、他の星の核を回収する使命を与えられた。ある者は星の核となり、星を守る使命を与えられた。ある者は始まりの魔神に反逆する者を粛清する剣となり、ある者は――何も意味も分からず粛清された。
始まりの魔神が与えるのは、希望か、絶望のどちらかである。始まりの魔神の命令は絶対だ。だから、私は人のフリをして神になることを止めるフリをした。なのに、ドラゴンボーンの適合者が、波紋を呼んだ。
それぞれ始まりの魔神に忠誠を誓っていた天使の末裔――ネポス・アンゲリスが、己の心に疑問を抱き、本当の敵は誰なのか、己の自分と向き合う事になった。けれど、自らが神となる一人の男が――大きな大打撃を与えた。其れでも、私は絶望をしなかった。例えこの先が――絶望ではない事を知っても、希望ではない事を知っても、この先に在るのがひとかけらの可能性だとしたら?私は、今まで何とも言えない気持ちになってしまった。ただ、これだけは言いたい。
「―――ボーンファイターは、本当に、絶望の淵から救われたのか」

『ルーク』
私はルークを呼ぶ。硝子のロケットを持ち、ネポス・アンゲリスの広い草原を見渡す。ルークは此処に現れた。
「翔悟は、無事で居るか?」
『ええ、無事に居る。理となった今でも、元気にしている』
「そうか、………………」
『…どうした?私の言葉が信じられないか?』
「そんな事は無い。唯、少し寂しいだけさ…」
『寂しい?どうして?』
「翔悟が理となって、全てのボーンカードが理に吸収されて、ネポス・アンゲリスが新しい始まりを迎えたのに…貴方は、変わらない姿のままだ。翔悟が居ない今、如何すれば良いのか分からなくなってしまった」
『そんな事は無い。貴方は、彼の思いを無駄にしないで、自由に生きればいい。そうすれば、貴方も少しは楽になれるだろう?』
「そうか…でも、少しは寂しいものだな」
ルークはそう言い、私は彼を見た。ぽつり、ぽつりと涙が流れたような気がした。

『大丈夫?』

その時――空が壊れた。ピシリ、ピシリと空が割れて、現れたのは漆黒の繭の形をした異形の化け物。私は危険を察知し、ルークを見たが――其処にはルークの姿など無かった。其処に居たのは――ルークの姿をした『何か』だった。
「…………!!」
私は、真っ黒な空間に放り出され、記憶を書き換えられた。ルークは、既にイドに飲み込まれてしまったのだ――いや、イドを生み出す化け物に――其処で私の記憶は途切れた。
絶望を与える最悪の敵になった彼を救うか、それとも殺すか。伝え切れなかった言葉がある。翔悟からの伝言だ。だが、私はどうしても…彼の言葉を信じられない気がしたのだ。ルークの心は濁り切っていた。濁り切って、心が黒く染まっていた。だけど、私は其れでも、貴方を助けたいのだ。例え、貴方を殺す結果となっても…真実は変わらない。答えは唯一つ。与えるのは、希望。
伝えなければならない真実がある。其れは――。

オリハルコンの結晶が具現化した道を進む。土属性のボーンライノボーンの適合者の心を具現化した道だろう。未知なる道、未知なる存在。唯、この先に居るのが、イドを生み出すコアが――ルーク。彼を殺すか、其れとも助けるか。結末は二つに一つの結果になる。
ペルブランド様から聞いた事がある。

「良いか、フレイド。お前が大事な誰かを助けたい時には、辛い代償を払わなければならない」
『辛い代償?』と私が首を傾げると、ペルブランド様は語る。
「星の核を回収する事は、大事な星の民を犠牲にしなければならない。だが、其れは大事な人を守りたいと言う思いから生まれる結果だ。忘れてはならない、助ける事には、何時も犠牲が必要だからだ」
『分かっています。貴方が大事な人だから。犠牲を払わなければならない結果になるって』
「そうか――だが、お前は成長したな。これも、星の加護のおかげだな」

辛い事は分かっている。犠牲を払う結果になるなんて分かっている。私は唯、貴方を助けたいだけ。

ルークと翔悟、この二人の交わらぬ結末は、如何迎えるのか。



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