Q:君は罪を許されると思っているのかい? A:思ってないよ。唯純粋に殺したかっただけさ
三つ編みを解き、純粋に綺麗な金髪が下ろされる。軍服の少女は唯七つの大罪である『色欲』のソキウス(アスモデウス)を見つめる。純粋に虐殺をした後に繰り返される血を拭う行為。
「大丈夫だったか?天使に傷を負ったが?」
「ああ、その傷ならもう癒えた。悪魔ゆえに癒えるのが早いからな。流石に天使共は俺達を悪魔だと気付き、追っ手を追加したが――まあ良い、虐殺を思う存分に楽しめた」
「レボルトが楽しめるのならそうしろ。だが、分かっているな――他の悪魔はそう易々と俺達の行為を黙ってはいられないだろう。ますます困った老人共だ」
ソキウスはそう言い、サーベルと鞘を抜く。天使の血はあまり付着していないが――彼は戦う時には天使を皆殺しにしていた。断罪の死刑執行人のように天使を虐殺宣告する。天使との和平を望むあの悪魔と、虐殺を望む俺達、どっちが間違っているのだろうな。とレボルトは不思議に囁く。
「ソキウス、服を脱がしてくれないか」
何時も着ている軍服を脱がすと、豊満そうな胸の間に切り傷が付けられている事が分かる。ソキウスは「これはどうした?」と聞くと、レボルトが罰が当たったの様に語る。
「天使の烙印。俺が悪魔になる前にナイフで抉られて天使の力を奪われたって訳」
「成る程な、お前が悪魔になる前―――天使だったのは聞いている。だが、其れとこれが何の関係が有る」
胸の間の傷を触ると少女はピクリと身を硬直する。其れはまだ、自分が天使だった頃の話である。だが、彼にとっては語るのは屈辱的な話でもあった。
大天使である自分は神に優れていると何時も誇らしげに思い、天使では最も残虐的な戦い方をしている。其れが仇となって追放の儀ではナイフに胸を抉られた。
「あがぁ!?」
ぐりぐりと身が焼ける思いがする。ナイフで刻まれたのは烙印であろうが――グリッと抉られる思いがする。
「ひぎぃっ!?あ、ああ、ああ!」
目をさめれば、天に落とされた。何時しか自分は悪魔になったと言うわけだ。
屈辱的な話だな――天使になって、優れている自分が悪魔になるとは思わなかった。だが、其れで良い。と心の何処かでは満足的だった。けれども、安らぎが決して訪れる事はなかった。
「それでは、愛或る友に祝福を」
ソキウスはそう言い、胸の傷に口づけをした。
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