人間生態観察記
始まりの魔神に従い、カードを回収する。我々ネポス・アンゲリスにとっては必要な事であろう。いや、己が神である始まりの魔神の命令は絶対だ。例え、私の主が其れに忠実であれ…始まりの魔神の言葉は絶対だ。とクルード様は言う。
「何故、あの少年は始まりの魔神に従わぬ?」
無言である私は、コクリとクルード様の言葉に頷く。ペルブランド様の命令だから。と私が強制的に帰還させたのだ。謹慎中のリーベルトに代わり、彼等を帰還させたのは私だから。
永遠など存在しないのだから。地球は何れ、誰かが回収するであろう。と私が納得している最中、クルード様は私に言葉を濁す。ドロッサスは「申し訳ありません」と言って、私にお願いをしたのだ。
ペルブランド様はクルード様を慕っている。無論、彼女の盟友であるバーリッシュも彼を慕っているであろう。だが、私は彼女の命に従い、彼等を此処に転送しただけ。すると彼は言う。
「あのドラゴンボーンの適合者は、一体何故始まりの魔神に逆らうのだ?」
さあ、分かりません。と私は思うも、少し矛盾に気付いたのだ。いや、思い出したくも無い…と私はそう言い、静かに立ち去る。ペルブランド様から聞いた、ダークケルベロスの適合者の戦い方…。いや、そんなまさか。

リーベルトは謹慎中である身だが、クルードが地球に向かい、ドラゴンボーンの適合者と邂逅を果たしたと言う報告を聞いた。彼は、ドラゴンボーンの適合者と一体何を話したのであろう…私はそう思い、顔色を悪くさせた。
「お嬢様!?如何したのですか…顔色が悪いですぞ!?」
モースはそう言い、私の身を心配した。だが、この疑問と胸の蟠りは一体なんだ…?彼女はそう思い、クルードにある一件を伝える為に彼の元へ向かおうとした。
「…フレイド様?」
ペルブランド様の部下である彼が、此処を通さないと言わんばかりに通せんぼをした。
「其処を退いて、フレイド様…私を通さない理由は…分かっているのであろう?これ以上、シュトルツ様の娘である私を巻き込む訳にはいかない…だが、私には、まだやりたい事があるんだ」
やりたい事?とフレイドは首を傾げ、また私を睨んだ。
『貴方は、触れてはいけない事実を知ろうとする…それでも、地球に行くと?』
図星であろう。私が抑えきれない衝動を見抜いた彼は、流石ペルブランド様の部下と言うべきか。
「地球人を侮ってはいけない…それだけではない気がするのだ」
『…そうか、気をつけて』
フレイドはそう言い、私に『行け』と言わんばかりに道を退いた。これ以上、知ってはいけない気がすると…私の体が教えてくれたのだ。私は覚悟を決め、彼の元へ行く事に決めた。

「あいつが地球へ…」
ドロッサスはフレイドの話を聞き、大層驚いた。一体どうして。と彼はそう思い、ショックを受けた顔をした。フレイドはこの報告が終わったと思い、立ち去ろうとする。
「――フレイド様…リーベルトは本当に…」
フレイドは『拒否。この話をしたら…貴方も取り返しのつかない事になる』と言って姿を消した。
「…あいつ、一体如何してこんな事をしたんだ…?」
リーベルトの背中は、何だか凛々しく…誇らしげに思えた。だが、そんな彼女が身勝手な行動をするなんて思えない――まるで、誰かが彼女の背を押しているような気がするのだ。
*前表紙次#
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