映らない記憶
――あれから数十年後の話である。
彼がボーンを回収し、英雄に登り詰めた。気付けば年を取っており、ペルブランドとバーリッシュも成長を遂げて評議会の一員となっていた。評議会をまとめるシュトルツとは盟友と言われるようになった。
そんな時の話である。金髪の青年が優秀な成績を取って評議会に登り詰めたと言う。
彼の名前はレボルトと言った。

「レボルト」
銀髪の青年ソキウスは、冷酷な金色の瞳をしており、レボルトに話しかける。彼は不機嫌な表情であり、モニターに映っている評議会のクルードとシュトルツを見て「けっ」と舌打ちをした。
「どうしたんだ、調子が悪いのか?」
「調子が悪いんじゃない。なあソキウス、英雄――本当に居るのか?」
「さあな。クルードはネポス・アンゲリスでは英雄と言われている。貶したら異端者と思われるぞ」
「異端者か…」
レボルトは八重歯をにやりとさせ、ソキウスは「?」と困惑そうな表情をしている。ソキウスは幼い頃から他人がゴミにしか見えないと思えている。だから似たような性格をしているレボルトに共感を持っているのだから。
「面白そうだな――その、英雄と言われている存在が」

「失礼します」
ペルブランドがクルードが居る執務室に入ると、二人の子供が喧嘩をしていた。一人は金髪の少年であり、もう一人はワインレッドの白いメッシュが特徴の少年だった。メッシュの少年は金髪の少年の喧嘩に負けて泣いているようだ。
「あの…クルード様…?この子達は…?」
「ああ、ペルブランドか」
「どうしたの、その子達は…?」
「ドロッサスのケチ!僕の大事なものを返してよ!」
「やだよ!これは俺のものなんだぞ!」
「うう…ドロッサスの馬鹿、もう知らない!」
メッシュの少年はバイズと言われているのか。なら金髪の少年はドロッサス――ペルブランドはそう思い、二人の子供を見た。
「…この子供達は、私が滅ぼした星の子の、生き残りだ」
「生き残り…」
ペルブランドは、バイズとドロッサスを見た。二人は喧嘩をしているが、親を亡くした寂しさを紛らわせているのだろうか。クルードは、辛そうな表情をしている。星を滅ぼした時の、せめてもの償いなのだろうか。だけど、クルードの苦しみを分からなければいけない。幼い頃、シュトルツから言われたあの一言が忘れない。
『ペルブランド達も、知っておいた方が良いんだ。エクェスとしての、誇りの葛藤を。誇りは、辛く、苦しいんだ。他人を犠牲にして生まれる誇り。其れは、クルード様にとっては、長く苦しい罪なんだ。だから、エクェスになる時には――その苦しみを忘れてはいけない。忘れたら、エクェスとしての誇りが成り立たない』
(…シュトルツ様……)
分かっているのだ――自分はダークリヴァイアサンに適合して、他の星のカードを回収する時に、他人を犠牲にしなければいけないと言う代償を払っている。其れは、辛く苦しい考えだと思うのだ。だけど、彼等の意思は自分で受け継ぐ事しか出来ない。其れがせめてもの償いだと思った。
泣いているバイズとドロッサスを見て、ペルブランドは両親を亡くしたとある子供の事を考えていた――。

クルード達にレボルトとソキウスの噂を耳にしたのは既に知っている。だが、戦闘をすれば、一度ケルベロスの牙が吠えれば――敵は情けも出来ずに死んでいく。レボルトが初カード回収任務を担当した時は恐るべき行動をとっていた。
星の民を虐殺し、カードを回収し――ボーンカードの適合者を嬲り殺していたのだ。
誇りも知らぬ若造が。クルードは、心底舌打ちをしていた。
「ご報告いたします。此度のカード回収は、私――レボルトが担当を致します」
バーリッシュとペルブランドは不機嫌な顔をし、カーバリオとラケルトは無言のままである。ソキウスは不敵な笑みをしていた。
「今度は虐殺をしないで、カードを回収するのでしょうね」
「虐殺は誇りではない――快楽主義者が行う事だ」
ペルブランドの辛口とシュトルツの一言が胸に刺さりそうである。だがレボルトはその一言を振り払い、「ええ、私にお任せ下さい。今度こそ絶対に、カードを回収して見せます」

――だが、クルード達に報告が寄せられたのは『星の民は全員死亡、ボーンカードは回収完了』と言う無慈悲な報告であった――。

楽にして星の民を苦しまずに逝かせる、その主義を撤兵しているクルード。星の民を虐殺し、最後には星をも滅ぼすレボルトの対立は、評議会で度々見られるようになった。ペルブランドとバーリッシュ、シュトルツもクルードの意見に賛成し、レボルトに警戒をしていた。レボルトにはソキウスと言うダークウロボロスに着装する評議会の一人である青年が味方をしていた。何故星の民を虐殺するのか。クルードには分からなかったのだ。だが、クルードは思っていた。

――あれは、道を間違っていた私の姿。戦いに明け暮れ、誇りを忘れた私の姿――。
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