彩の無い世界
――いかなる自由にもまして、良心の命じるままに知り、語り、論ずることのできる自由をわれに与えたまえ。
ジョン・ミルトン

最初はほんの一握で良いと願った。仮初の平和を与えられ、自分は退屈だと思っていた。始まりの魔神の御意志に従う事で、永劫の平和を与えられると言う事実。幼い自分は、母親につられて始まりの魔神をあしらった絵画を見た。
「見て、ソキウス。始まりの魔神様は、貴方を祝福しているのよ」
けれど、それが――酷く残酷に思えた気がした。始まりの魔神に仕えるのがネポスの信仰。だが、幼い彼にとっては、悪夢のような存在でもあった。

「神様って本当に居るの?」
「当たり前だろ。なんたって始まりの魔神の加護を受けているんだ」と言うのが一般常識なのだから。ソキウスは酷く、答えた人がゴミクズに思えたのだ。だが、答えても――世界は変わる事は無かった。
目の前の人がゴミクズに見える。其れは些細な運命なのだろうか。それでも真実が知りたかったのだ。幻獣種のボーンを手にしたって、何も変わりはしない現実を受け入れる?神の鎖に縛られたこの世界を?

―――そんな疑問を抱える俺の前に現れたのは、黄金の髪をした少年だった。

「あの、その…」
戸惑う俺が、訓練所で誰かとぶつかった。謝ろうとした時に、手を差し伸べられる。
「お前、空間属性だろ」
「そう、だが…」
紫水晶の瞳をした少年は、ニコリと笑った。嗚呼、これが運命と言えるのだろうか。と考えている最中に、少年は鋭い目付きを軟らかくした。
「其れに――ひとりで何か抱えているだろ?話、聞いてやるよ」

街外れの公園にて。少年を見て俺はオドオドと彼を見る。
「お前―――始まりの魔神が嫌いなんだろ?」
何で。と自分の心中がバレてしまったのだろうか。すると少年はくくっと笑う。
「だってさ、目付きで分かるんだよ。どうして始まりの魔神はこの世界を神の鎖で縛り上げるのだろうか――ってさ」
「……!」
そうだ。始まりの魔神に支配されている、自由の無い世界は嫌いだ。ネポスの民も、始まりの魔神を受け入れる。自分だけ受け入れないのは、きっと不公平だと誰かが言う。だが、自分と似た境遇をした彼と出会った事が――。

「俺の名前はレボルト。お前の名前は?」

俺はソキウスと答えた。レボルトは「ソキウス――良い名前だな」と苦笑し、俺を真っ直ぐな眼で自分を見た。

始まりの魔神に従う事が運命なのならば、運命に逆らう者も居るであろう。だが、その運命が悲劇を生むことを誰も分かっていなかったのだ。

「終焉の結び?」
「そうだ。始まりの魔神を消す事で、ネポス・アンゲリスに永劫の平和が訪れると言う言い伝えだ」
「へぇ…面白そうだな。で、その終焉の結びを行う方法は?」
「――星の核を三つ揃えば、終焉の結びを行えるのだ」
益々興味が沸いて来た。始まりの魔神を消す事で、真の自由が得られる。永劫の平和が訪れる。そんな言い伝えに、興味を持ったソキウスはレボルトの友で居る事を決意した。するとレボルトは、またニコリと笑った。
「ソキウス、お前は素晴らしいな」
「ああ、レボルト――俺もだ」
*前表紙次#
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -