エディルエインの王

洗面台に立ち、血で塗れたローブを洗う為に服を脱ぐ。鏡を見てみれば、自分の体が異常だと思い知らされる姿が露わになる。背中は鞭で叩かれた跡で、擦り切れた痣が沢山付いている。首は、何事も無かったように傷跡が無い。首の声帯辺りの部分に、紋章が刻まれている。此処に傷が達していなくて良かった。と思う。契約した部分に、紋章が浮かび上がる――これを見ると、嫌でも奴隷時代を思い出すが…時には良い思い出も思い出す。


「其れで、魔術の基礎に何か質問は無いか?」
顔の半分に傷が残っている――まだ老いが少し残っているが、男はチョークで魔術についての質問をした。金髪の少年とワインレッドの髪をした少年は、英雄を黙って見ていた。
「クルード様、質問です」
「何だ、バイズ」
バイズと呼ばれたワインレッドの少年は、唯黙っている少年を見た。
「――フレイド様は、何故喋る事が出来ないのですか?」
「ああ、このドロッサスめ、私もで御座います。何時も寡黙で喋らないと聞いていますが、何故彼は喋らないのですか?」
黙っていて欲しい。と言う事すら出来ない。あの過激な過去を知って欲しくない。と言いたいけど、言えない。するとクルードは、意外な事を発する。
「――時には、知ってほしくない事もある。フレイドは、お前達よりも1個上であるが、声を聞いた者は居ないと噂されている。しかし、真実は時に残酷だ。真実を知った時は、お前達はどんな気分になる?」
「――ああ、そうでしたか。クルード様は、ワイバーンと契約をした身でありながら、辛い代償を支払った。私はこの残酷な事実を知った時は、身が震えました」
「私もです、クルード様…」
どうやら、丸く収まったようだ。後ろに居た自分は、唯彼の言葉が良い言葉であろう――黙って見ていた。

「真実を深追いするな。深追いすれば、何れは死に至る」



――深追いすれば、何れは死に至る。
水が流れる音がする。誰かに助けられてばかりで、何時も無力と突きつけられる。しかし、この運命に抗えないのであるならば、どうしても、どうしても誰かに愛されたいのだ。真実を追究すれば――何れは身が破滅する。

貴方は、私の何を知っているのだろう。

髪を纏め、ただただ身支度をする。一体何をすれば、この身は救われるのだろう。契約をしても、乾く事の無い――何かを捜し求めて。

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