二人

『聖域の森』。この地には、かつて世界を守っていた女神様が住まうと言われている。戦火に幾度か晒され、まだ焼け跡が残っている。この地に入るのはかなりの危険が生じる。何せ、狼や熊と言った肉食動物、ゴーレムやゴーストと言った魔物が住んでおり、立ち入る人は少ない。
一人、魔術師であるフレイドは森に立ち入り――森の奥深くまで消えた。

(―――霧が生じている。早く見つからなければあるまい)
体力は少し優秀ではあるものの、この地に居ると危機感が生じるのは何故だろうか。この森に魔物が住むのならば魔術で退散させようとしたいものの、念の為に魔力を温存させなければならない。小鳥の囀りも聞こえないこの地に、長居は無用。とっととソキウスの言う『金髪の男』を見つけ、帰還しなければならない。と、少し声が聞こえた矢先に――。

「―――っ!?」

ドスッ。矢が放たれる音がした。間一髪其れを避けたが、矢が地に刺さっている。非力な魔術師を攻撃する者は一体、何者なのか……?
ふと、木の上に誰かが立っていた。眼帯をした男と、ターバンをした男。ターバンをした男は手にクロスボウを持っており、眼帯をした男は二振りの短剣を持っていた。
「おーおう、避けるとは危ないんじゃないのか、魔術師さんよ」
ターバンをした男はそう言い、軽そうな口調でそう言った。眼帯をした――目付きが鋭い男は、短剣をギラギラと光らせている。手馴れの山賊か、其れとも近くの帝国の刺客か。フレイドはダガーを持つ。

「…臭うな」
「ヴィクトール、何が臭うって?」
「この魔術師は、何も言わない――其れに、魔獣の臭いがする」
「ああー…そういう事ね。お前の鼻は結構優れているのは最高だな――こいつ、魔獣と契約を果たしている」

「(契約を果たしている事がバレた…!?)」
しかし、何と契約を果たしているのかはこの二人は分かっていないのだろう。簡単に始末する事は難しい――だが、先に足止めをしていれば!

しかし、右足に矢が貫き――痛みが襲う。倒れこんだ自分は、痛みで何もする事が出来ない。
「その矢には毒が塗ってある。安心しろ――そう簡単には死なない」
そう簡単には死なない。せめていっその事、死なせて欲しい。痛みで声にもならない声が出そうだ。首筋にはナイフが突きつけられ、眼帯の男は言う。
「―――せめて、いっそ楽に死なせてやろう」
ナイフが喉に突きつけられたその時――世界が暗転したような気がした。

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