痛みの重さ

声は出ない。脇腹には剣で刺されて真っ赤な血が滲んで出ている。うなじの紋章は相変わらず。と支度をしながら服を着替えていると、赤子のドラゴンがきゅいきゅい鳴いている。私はドラゴンを撫でていると、ぽつり、ぽつりと雨が降る。そう言えば、まだ私が幼い頃の話だ。

「どうして、お母さんは僕を殴るの?」
土砂降りの雨が降る頃に、母は私を殴ったり蹴ったりしていた。母は何時も、事が全て終わってから言う。「ごめんなさい、ごめんなさい」と。痣だらけの腕が痛いのは私の痛みだ。火傷の脚が痛いのは私の痛みだ。全て、私の痛みだ。全てが私の痛み。痛みこそ日常だから。と語り継がれる。そうして、全て痛みが実感されるのは戦争の時だった。

戦争でいっぱい人が死んだ。私は契約者だから生き残った。理不尽な世の中だ。弱い者が死に絶えて、強者が生き残る世の中。そんな世の中で私は生きている。契約者であれ、何時かは老いて死ぬ。そうだ、私は――。

せめて、私が私でありたいのならば。いっその事、彼女の為に生きよう。初めて、生きる事が分かったのだ。全てを諦めていた自分が、初めて希望を見出していたのだから。

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