ステラ

フレイドが村から帰った時にはレボルトがテーブルに座って夕食を出して食べていた。
「帰って来たか。村はどうだった」
フレイドは何も言わず、席に座る。この無愛想で無口な青年と、金髪で残虐で狡猾な青年がテーブルに向かって夕食を食べるなんておかしな話だ。
魚のムニエルに村で買ってきたパン、野菜サラダと色とりどりなバランスを加えた夕食である。
レボルトがフォークで魚を一口食べると、フレイドは何も言わずに「………」と無口のままである。食事に手を付けられない状態なのか、一口も食べていない。
「どうした、食べたくないのか」
レボルトが問えば、フレイドはぶんぶんと首を横に振って否定する。彼は食事に手を付けられない訳ではないらしい。じゃあ、何故?とレボルトが問えば、フレイドは紙と羽根ペンを出し――そのまま文字を書き込む。
『私は、幼い頃から満足な食事に手を付けられていない』
『食事は鼠一匹か、干した肉のどちらかだった』
『でも、あの人が私を拾ってくれた後に――食事に手を付けた』
『だけど――店で食事をしている最中に、貧しい子供がじっと私を見つめていた』
「貧しい子供…?」
確かに王国は、貧富の差が激しいのだ。豊かな生活をしている貴族、貧しい生活をしている民――聖なる王国は、確実に腐敗を進めていた。
『子供は、私が食べているパンを欲しがりそうな顔で見ていた。あの人は子供に気付き、パンをあげた。子供はおなかが空いているのか、ガツガツと食べていた』
「………成る程な、贅沢な食事をするのは嫌なのか」
フレイドはこくりと頷き、パンだけを食べる。席から立ち上がり、寝室へ向かう。

「――――お前は、其れでも過去の妄念に縋るのか」
レボルトの低い声が、耳に響いた。だが、フレイドは其れすらも聞かずに、寝室へ向かった。

「――――――――――っ」
声を出したい。でも代償で支払われた。何も言えない事が辛い。あの子供は、かつての私。無に縋り、無でしか生きられない私の残響。
ベッドの中で、散らばった髪を見て思う。何故、こんな事になってしまったのだろうか。彼を保護する所か、自分が苦しむ状況になってしまったから。やがて、私が私である為の夢は消えた。ねえ、どうして、貴方は、私を。

――――夢の中に沈む。

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