『わたし』

『私の名前は、フレイド』
「そんな名前だったの、お兄さん」
フレイドはこくんと頷き、続きを書く。
『私はガーゴイルと契約を結んだから、声を失って喋る事が出来ない。其れに、私は帝国の者ではない――王国軍の騎士だ』
「え、アンタ…王国の者だったの?」
『嫌だったら嫌とハッキリ言えば良い。貴方は帝国領の人なんだろう?』
「ああー…オイラは元々帝国領の者じゃない。遠い国からやって来た元奴隷の脱走者。って言えば分かるだろう?オイラは昔、帝国軍に浚われて奴隷のような扱いをされていたけど、帝国軍の軍人のルークって奴がオイラを拾ってくれた」
『…貴方も、奴隷?私と、同じ』
「え?同じなの?」
『私は、遠い国から来たんじゃない…王国生まれで、母親に捨てられた形で奴隷市場に売り飛ばされた。この後、8代勇士のクルードに拾われて読み書きを覚えた』
「成る程ね、お互い拾われた同士って事か」
『じゃあ、貴方はどうして此処に?』
「オイラは此処で、のどかな村人を助ける為に此処に居る。昔は荒れていたよ?と言いたいけど、ルークのお陰で此処に居る。じゃあ、お兄さんはどうして王国軍の騎士に?」
『其れは……』
此処で羽根ペンを書く動きが止まった。するとアントニオは語る。

「何時でも此処に来てよ。何か相談があったらオイラが聞いてあげるからさ」

「………」
フレイドはまた頷き、元の聖域の森の小屋に戻る形で村を出る準備をした。

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