「えー、失礼します。特殊警察『CSPU(Computer.world.special.police.unit(電脳世界特殊警察部隊)』の者だ。物色しまーす」
特殊銃型デバイス『ケルベロス』を持ち、『ヴァニタスの魔女』が住んでいる隠れ家に突入したユーゴは彼女が住んでいる部屋に突入したが――既に蛻の殻だった。逃げられたと思って癇癪を起こしたユーゴだったが、通信機から聞き覚えのある声がする。
『此方アルファバジリスク。如何だ、見つかったか?』
「あー、駄目だなこりゃ。完全に逃げられた」
蛻の殻になった部屋にはベッドと箪笥が置かれていただけであった。彼女の姿は何処にも無い。完全に逃げられたな、こりゃ。とユーゴは溜息を吐き、拳銃を持って辺りを物色するが――やはり、何も無い。
電脳世界が当たり前になった時代。高度な存在と言われている電脳精霊と共に暮らし、相手と対戦する事も出来るデュエルアバターなどが存在する世界で、一つの事件が起きた。其れは電脳コード『オリュンポス』が盗まれ、かつて起こった最悪の大災厄『フィンブルツィールの災厄』の到来を予測した電脳世界を統べる者――精霊王『ティターニア』は、盗んだとされる『ヴァニタスの魔女』の捕縛及びオリュンポスの奪還を、特殊警察『CSPU』に委ねた。警察官の一人ユーゴは、特殊銃型デバイス『ケルベロス』を巨大な剣へと変貌させた。
「ったく!すばしっこい奴だ!」
ユーゴはそう言い、ベッドを蹴り上げた。

「全く、アキ御姉様みたいに綺麗に任務を遂行して下さい馬鹿」
「馬鹿はおめーだ」
特殊銃型デバイス『ユニコーン』を携わる大庭ナオミにユーゴは貶し、特殊銃型デバイス『バジリスク』を持ったWは資料を見る。
「で、ユーゴが突入した結果――すっかり逃げられたのか。逃げ足が速いな、その『ヴァニタスの魔女』って言うのは」
Wはティターニアとは旧知の仲であり、精霊王とのパイプラインは繋がっているらしい。
「で、表向きはドラゴンランドの監視員である『ベヒモス』のゴーシュは消息を絶って『リヴァイアサン』のドロワもドラゴンランドで待機中って訳か?」
「あー、すいませんねー。俺が不真面目にやっていたから」
ユーゴは不真面目そうに語り、ナオミに睨まれる。
「勝鬨は不在か?」
Wはそう言い、ユーゴは「不在だけど?」と言った。Wはそうか…と言った。
「特殊銃型デバイス『ワイバーン』の修理が終わったんだが…アイツは格闘術を護身しているから銃をあまり使わないからな」
するとユーゴにWは語る。
「『エリュシオン』を統べるコンピューター『ウロボロス』のユーリを知っているか?」
「ユーリ…?」
「おう、アイツは『ウロボロス』を管理する電脳精霊であり、結構大物らしいぜ。元々は人間だったとか噂になってる。んで、俺がユーリと会う事になった訳」
大丈夫か?とWは心配そうに言うが、ユーゴは「平気平気!」とへっちゃらな顔で言った。

「その『ウロボロス』の管理は――インペリアル・コーポレーションが取仕切っているらしいってな」

××××××××

「ええ、分かっていますとも。監理コンピューター…コードネーム『ウロボロス』、唯の管理システムではないらしいって?」
『そうだ、特別監視員――『ファルコン』又の名を『シェイクスピア』である黒咲隼はウロボロスを統治する『ユーリ』の正体を突き止めたらしい。『フォックス』のツァン・ディレは現在、『ヴァニタスの魔女』を追跡中だ。私も早めに気付くべきであったが――』
「いや、良い。其れよりも厄介なのは『オズ・マジック・ウィンド』の『トト』の紫雲院素良――ジムと付き従って、我々を狩るつもりであろう、赤馬零児」
『君も気付くべきであったか。『オズ・マジック・ウィンド』の『オズ』は――『藤原優介』である事を。君も気をつけたまえ』
ブルーノは電話を切り、兄のアンチノミーのラボにやって来た意外な客人を見た。
「勝鬨君、今日は何の用件だい?」
勝鬨勇雄。インペリアル・コーポレーションのこの部屋にたまにやって来る客人だ。だが彼は、無言のまま椅子に座る。
「今日は特訓ではない」
「特訓ではない?」
すると彼は、データチップを持って来た。
「これは何?データチップに見えるけど」
彼は予想外の一言を言う。

「データチップに見えるか―――?監理コンピューター『ウロボロス』の『鍵』だ」

Next.Chapter…?『無限回廊のウロボロス』


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