幼い少女ジムは、電脳世界を歩いていた。空気が不穏でも、電脳精霊の化石竜と一緒に街中を歩いていたのだ。不穏な空気の中で彼女は健気に歩いていた。
――覇王が、彼女の力を利用するまでは。
ドルベとアリトが戦闘を行う中、覇王が第二の能力を使った。他人の精霊を吸収する力――ナッシュは其れに気付き、倒れている少女を見て覇王に怒りを感じた。
「覇王!貴様、何て卑劣な行為を…断じて許すわけにはいかない!」
しかし、少女を巻き込んで力を発揮したら巻き添えになってしまう。すると一体の電脳精霊が彼女を保護した。
「ギラグ」
「ナッシュ、此処は俺に任せろ!怪我人はアガルタで収納する!」
無精王のギラグに怪我人を任せ――覇王と再び対峙する3人。しかしドルベもアリトも体力を消耗している。
「…これまでか」
「此処まで来ると、体力の限界が近いんだよなぁ…」
「もういい、下がっていろ」とナッシュはそう言い、覇王と対峙する。
覇王はこの感じが何処かで見たことがあると思ったら――かつて電脳世界で一度だけこの世界を破滅しかけた存在が、再び対を成すとは思わなかった。
「この騒ぎの現況はお前か、精霊ユベル!」
現れたのは、男性と女性の体を持つ異形の存在である…精霊だった。ナッシュは怒りのあまり声を荒らげている。
「愛しい十代の為に覇王の器として蘇らせたのに…なんて事をするんだい?」
「こんな事が出来るのはお前だけだ…よくも平和を、民を!」
「僕は愛しい彼の為に、精一杯やっているのに…邪魔をするなんて…ねぇ?」
「…何が言いたい!」
「この子の魂が望んだ事なのに?」
「………!?」
「十代は覇王の魂を自分の中に入れ、ダークネスを殺すために居る」
「それなら…何故覇王が蘇った!何故なんだ、ユベル!」
「それはね――」
――そこで、十代の意識は目覚めた。
title:レイラの初恋
BACK