テーブルの上には焼きたてのクッキーと紅茶が置かれていた。ハラルドは黙っているままだった。ジムは「ごめん」と呟いていた――その原因は、自分にあった。

「ドルベもミザエルも、君の犯罪経歴を無かった事にするって。『友』として認めるってさ」
素良はそう言い、ジムとハラルドを見据えていた。その瞳は無邪気であって、無垢な瞳であった。彼の眼は、真っ直ぐな眼差しだった。
「良かったねジム。これで追われる必要は無くなったよ」
ハラルドは「ほう」と口を紡ぎ、「君は犯罪者として追われる立場だったのか?」と純粋であるが――その言葉は残酷な言葉であった。
「君は、罪を重ね…重ねて『メラグ』…いや、璃緒を助けたい思いが無駄になったのだな」
唇が震えた。何かの衝動が突き動かされる――素良が口を動かす。
「ジム…?」

「五月蝿いッ!」

彼女らしからぬ声で素良の手を振り払い、無言で部屋を立ち去ろうとした。嗚咽が入り混じっている声を聞いたハラルドは、彼女の腕を掴んだ。
「………!!」
「少し、頭を冷やそうか」

――殺伐とした空気の中、先に口を開いたのはハラルドだった。
「――思いが無駄になったのは分かる。だが、君らしくない…」
ハラルドはジムに問いかける。
「これまで積み上げて来た彼女の為だと思って――犯罪を犯して来た。彼女の為だと言うが、君は十代と出会って…何かが生まれたのだ」

『見て、貴方の髪の色は綺麗』
璃緒はそう言い、彼女の下ろした髪を見た。
『私達、友達でしょう?』

『ああ…マイ・フレンドには変わりが無いさ』

「時に、人魚姫の話をしよう」
人間の王子に恋焦がれた人魚は、魔女に声を代償にして人間の足を手に入れた。しかし王子は、他の国のお姫様と婚約をしていた。姉妹達はこう言う。王子を殺さなければ泡となって消えてしまう。しかし人魚は出来なかった――人魚は船から飛び降り、恋心と一緒に泡へと還った。
「対価の代償は大きい。君がカレンを助ける為に払った代償は右目…おっと、少し悪ふざけが良すぎたかな?」
「じゃあ、どうしてあの時…俺の姉の名前を?」

『君がジェームス・クロコダイル・クックかな?』

「君は姉にそっくりだよ…無茶をする所が、そして、君の面影は…君の姉と瓜二つなのだから」

title:空想アリア
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