「…で、君達が大暴れしたせいでサーバーが破損したって?」

素良と幸子が風精王シルフ――ドルベの鶴の一声『馬鹿者』!の一声で正座させられた後、ドルベは頭痛に陥った。
「すみませんね、幸子が暴走したおかげで破損してしまって…」
「君が霧の王で戦いを中断させたのは良いが、素良…君はどうして此処に来たんだ?」
「ちょっと伝えたい事があってね」
「伝えたい事?」
素良は、こう言った。

「…ジムを助けて欲しいんだ。このままジムが璃緒を救っても、璃緒が悲しんでしまうんだ。メラグも、ナッシュも」

「…ナッシュ?私の盟友が?」
「そ。君の盟友の妹はメラグなんだよね。ジムを犯罪者じゃなくて…ナッシュのお友達として認めて欲しいんだ」
ドルベは考えた。電脳コードを盗んだ少女がドン・サウザンドの復活を目論んだのではなく――璃緒の救済を望んだ。電脳コードを売れば、彼女の手術費が稼げる。でも、電脳コードを悪用される事を考えると――。
「――私は、彼女を我が友ナッシュの盟友としては認めない。そんな信頼が何処にあるのか?証拠があるのなら――」

「――待て」

「?」
ドルベも幸子もアモンも素良も、予想外の人物の声に驚いていた。その人物は――光精王ウィルオウィスプの『ミザエル』だった。

「…その話、信頼出来る」

「なっ、何を言っているんだ!大体ナッシュがジムを…いたいけな少女を利用する事を目論んでいるなんて信じられない!ミザエルはどうしてその事を信じられるんだ!?」
「――其れは、ナッシュが教えてくれたからだ」

其れは、精霊会議を行う前の前日。
ミザエルの住むシャングリラに予想外の訪問者が現れた。予想外の訪問者――ナッシュだった。
『ナッシュ、どうしてお前が此処に居るんだ?久しぶりの再開だというのに…』 
『…手短に話そう。ジムを、ジムを…頼む』
『…ジム?』

『あいつは…苦しんでいる。自分が妹を傷付けた事に。其れに、過去の痛みが、まだ…彼女の傷跡が、癒されてないのに…更なる傷を受け、一人で責め続けているんだ。彼女を…俺の友人として、たった一人の少女として認めてやってくれ』


「…どうして、その事を言わなかったんだ!?」
「ドルベには内密にしてやってくれと言われてな…その時が来たのなら、話せと」

「…素良、と言ったな」
「何?」

「…ジムに伝えろ。お前は、まだ死ぬ訳にもいかないし、苦しむわけにもいかない」

TITLE:水葬
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