「久しぶりですね」
眼鏡をかけた青年はそう語り、フッと降り立った精霊王に話しかける。ニライカナイ――沖縄に伝わる地の名を持つ精霊宮に住む少女は、巫女であり――水精王『ウンディーネ』のメラグ。彼女はとある屋敷に降り立っている。
「貴方なら、此処が分かるんですね」
青年――アモンはそう言い、メラグに目を向ける。彼女は何処か、消えてしまいそうな表情だった。メラグは、何か言いたげな表情に変わる。
「貴方と出会ったのは、13年前でしたか」
13年前――親に捨てられ、まだ彼が『アモン・ガラム』では無かった頃。一人、ゴミ置き場に佇んでいた。彼は雲を見上げ、死を待っていた。
そんな彼に手を差し伸べたのは――彼女だった。彼女は『貴方はまだ死んでいい人間ではない』と言い、食料をくれた。彼女の言葉が忘れなくなって――『アモン・ガラム』になった頃に彼は、メラグの事を忘れてしまおうと思った。
ジム、オブライエン――彼らと学校生活を送る中…彼はメラグを忘れていた。彼女を忘れた頃の矢先――ジムと璃緒の出会いが彼の記憶を蘇らせた。
「でも、僕は貴方を忘れたりなど出来ません。ジムと璃緒が出会ってしまったのは、運命なのかもしれない…僕に忠告したのはメラグ、貴方でしょう」
『二度と、璃緒とジムを会わせないで…!』
「分かっているんです。聖歌の喜歌劇が精霊宮の封印を破壊しに来る事を。貴方も、もうすぐ『消えて』しまう事を」
出会いは、忘れられない記憶になる。だけど、この記憶は忘れる事など出来ない。
「…『ヴィヴィアン』に伝えて下さい。もう直ぐ、電脳世界は『終焉』を迎える事になります」
アモンはそう言い、メラグは口を閉ざしているばかり。するとメラグは――初めて言葉を出す。
「…また、会える?」
「ええ、また会えますとも。僕達は、きっと運命が巡り合わせたのでしょうね」
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