ふと、目を覚ますと――目の前にはレイン恵と…此処に居る事が有り得ない紫雲院素良の顔があった。
「あ、目を覚ました」
「…此処は」
素良は「医務室。君、地下で倒れていた」と語る。ああそうだ、鬼柳と戦って攻撃を受けてまた意識を失ったんだ…と思い出す。しかし、恵はあることに気付いた。

「…なんで、涙を流しているの」

「…え、涙を流してなんて…そんな事、有り得るわけが…」
涙が零れる。其れは、過去を思い出した。
自分には、確かに姉がいた。姉と一緒に、インペリアル・コーポレーションの地下室に行っていた事。電脳精霊を呼び出している実験の爆発事故に巻き込まれ…姉が亡くなり、自分だけ大火傷を負った事。両親が過去が大きな傷にならないように…記憶を消した事。両親はその事を隠していた事。あの屋上で…姉と一緒に遊んでいた事。
何故、思い出してしまったのだろう。確かにあの時、姉がいた。姉の手の温もりを知った。だけど、その記憶を忘れてしまっては――自分は、大馬鹿者だ。
ふいに、ドアが開き――十代が入って来た。

「――ジム、急に姿を消してごめん。だけど、俺は…」

「…十代」
自分は十代に抱き付き、涙を流していた。十代は自分を優しく抱きしめてくれた。彼は何も言わず、「ごめんな」と言った。覚めない夢が、覚めてしまった事に気付いても…信じてくれた人に裏切られたような気分だった。

あの時の夢を見た。
大火傷を負い、包帯を全身に巻いている自分は…虚ろな目で姉の姿を見た。姉は何も言わない。動かない。全身に包帯を巻き、目を閉じたような感触だった。自分はただ、姉が死んだのだと悟った。自分は――目を閉じ、現実から逃避した。

あの時の夢を忘れるなんて、なんて事をしてしまったのだろう。
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