『電脳世界』と呼ばれなかった頃の話。
この世界は『精霊界』と呼ばれていた。精霊たちが楽しく共存し、喜びと祈りが響きあう世界。だが、そんな世界を良しとしない者が現れた――『ダークネス』。ダークネスは精霊界を追放され、精霊界を憎んだ。
精霊界に多大なダメージを与える事を望み、『悪意の海』に封印されし神『ドン・サウザンド』を復活させた。ドン・サウザンドはまず手駒として人間界から人間を浚った。
人間の元の精神を殺し、精霊の意志を宿した――其れが、後の精霊王と言われる存在だった。だが、其の手段に怒りを宿した者が現れた。そう、俺と――三極神。そして人間界からの賢者『Z-ONE』達。そして…ドン・サウザンドの手駒の筈だった『ナッシュ』。
彼等の力を結集して、ドン・サウザンドとダークネスを封印した…のだが、人間界に多大な悪影響を及ぼし、精霊界にも多大なダメージが与えられた。
このような悲劇を起こらない為に、人間界と精霊界は協定を結び、人間界の技術で精霊界は――電脳世界となり、人間も入れるようになった。
俺はどうして封印されたって?そんなの――待ってたんだ。お前が来るのを。

「来るのって…」
『お前は、電脳精霊と共存を結んでいる。人の心を宿している』
「だからって!守れる力なんて要らない!俺は皆を悲しませない力が欲しい!」
『そうか…それなら、お前の言うとおりに』
覇王は、棺を破り――電脳精霊となり、十代の心に入り込んだ。十代は、其処で意識が途切れた。

目を覚ますと、病院に居た。隣には明日香が眠っている。
両親が「良かった」と泣いていた。其れでも、何で悲しい顔なんだろう。するとヨハンが「お前は聞かなくて良いんだ」と言っている。
ああ、そうだ。俺は――明日香を守る為に犬を殺したんだ。無残に、残虐に。其れでも俺は、守りたかっただけなんだ。
十代はそう言い、瞳から涙を流した。こんな力、要らない。

深夜。病院から抜け出し――一人泣いている最中、声が聞こえた。
『十代』
優しい声だ。朗らかな声で、今までとは全く違う。今までは重圧な声だったのに、優しい声。
『十代、僕が此処に居る』
傍に居たのは、悪魔のようであり、天使のような姿をした――電脳精霊だった。
『僕の名前はユベル。十代、やっと出会えた』
「ゆ、ベル…?」

『僕が十代を守ってあげる』

そして、俺は決めた。
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