ジムはこっそり『アルカディア』を抜け出していた。
(――アリト、お前の言うとおりだ。俺は馬鹿な事をした)
電脳コードを盗んでまで彼女を助けようとするなんて自分は…馬鹿だ。其れは彼女を悲しませる行為に過ぎない。
電脳世界の中、歩いていると――風が吹く音がした。
「Windが、泣いている…」
ジムは早く帰ろう。と決心した所、銃声が響いた。
「…!?」
後ろに居たのは、あの『ガレス』――と、カタールを模した武器を持つ金髪の女性だった。
「…っ!」
「私は『モルドレッド』のシェリー・ルブランよ…少し話があるの」
「其れは…No.Thank.Youだ!」
ジムは急いで逃げ出した。

(逃げ出しても、キリが無い…!)
まさか円卓の騎士達が此処まで追い回して来ると、キリが無い。息を切らしても、攻撃を受ける。
此処は攻防一体。何とか凌いで――。
「遅い!」
腹を足で蹴られ、咽た。しかし其れだけではない――あの『ガレス』の電脳精霊が旋風を巻き起こした。
「やっ…」
壁にぶつかり、倒れ伏せた時にヘリからの銃撃を受けた。
「あああ…がああああ…ひぁあ!」
電脳世界ゆえに死なないが、ダメージは大きい。腹に穴が開けられ、旋風で腕を切り裂かれた。
「どうしたの…これで終わり?」
意識が朦朧とする。何でこんな事になったのだろうか。髪を兵士に掴まされ、意識を失っているにも関わらず電気ショックで意識を覚醒させられた。
(十代…)
涙が頬を伝う中、意識を失う最中――黒衣の男が此方を見ていた。

「…円卓の騎士達は…我々『精霊王』達に歯向かう組織。所謂レジスタンスだ」
ドルベはそう言いながら、語る。観客勢がざわついてる最中…ゾーンは説明をした。
「昔…まだドン・サウザンドが地上と電脳世界をまとめていて、精霊王達のリーダーとして取り仕切っている頃の話です。彼は手段を選ばない性格故に、超能力を持った人間を迫害し、自然災害を発生し、戦争を発生したのです。
其れに反発した精霊達と人間がドン・サウザンドともう一人の神『ダークネス』に革命を起こし、地上と電脳世界を巻き込んだのです。
多くの死者が出て、地上と電脳世界に二つの王が座を着いたのです…。
其れが、『フィンブルツィールの災厄』の真実です」
再び観客がざわめく。
「私――アポリアは人間の体として死んだが、電脳精霊として生きている。恐らく円卓の騎士達は電脳世界に叛逆を起こすだろう…」
アポリアもそう言いながら、悲しそうな顔をする。
十代はその事実を受け止めながらも、何故か嫌悪感が出なかった。
過去の事なのに、何故か6年前の事を思い出す――。すると其処に素良が現れた。
「十代、大変」
「どうしたんだよ、素良」

「ジムが大変なんだ」

title:水葬
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