電脳世界――『ヨスガ』サーバーエリア

一人の男がコンピューターに睨めっこしていた。金髪をカールした男は映し出されている情報を見て睨めっこをするシーンはどうにも似合わない光景なのであるが、其処に十代と一人の女の子が現れた瞬間顔色が変わった。
「よっ、パラドックス!」
「むむっ…十代か」
パラドックス。彼は電脳世界で精霊王に仕える『天才』の一人であり、アポリア、アンチノミー、Z-ONEの四人の内一人である。
彼はある事をきっかけにして十代と知り合いとなり、ちょくちょく来る十代には丁重な御持て成しをしていた。
「今何をしていたんだ?」
「君には関係無い事だ――未来永劫絶対関係無い事だ」
「って言って置いて顔に描いてあるぜ」
ぎくり!パラドックスは溜め息をついた。すると十代を見て何か足りない事が気付いた。
「そう言えばユベルはどうした」
「ああ、あいつは――」

『ちゃんといるよ』

パラドックスはやっぱりかと言わんばかりに顔をあんぐりとさせた。
『十代がボクを一人にするわけ無いじゃないか』
「あー…あああー…」
パラドックスは溜め息をついた。彼の名前はユベル。電脳精霊であるがこいつは少し特殊だった――何せ彼(彼女と言った方が良いだろうか)はかなり昔に電脳世界に多大なダメージを与えた存在なのだから。ナッシュが封印を施したのだがある事件をきっかけに封印が解かれ、愛しい十代と一緒に居るのだから。
「まぁ其処は置いておいて、何の用だ」
「世界を任された!」
「…………は?」
世界を任されたという何と言う爆弾発現。するとパラドックスは我に返り、ジムに話しかける。
「君は誰なのかね?」
「That。俺はジムであって――」
「ああ…教授の…」
パラドックスは納得した表情であった。すると十代は彼が調べていたコンピューターの画面に、何か映し出されていたと気付いた。
「其れって何だ?」
「電脳世界に封印された魔獣についてだ」
「魔獣?」
「君達に言っておいてならなければならない事であるが、電脳世界にはユベルよりも強大な魔獣が封印されている」
「おい、それって――」

「電脳コード…『オリュンポス』。封印された彼等を解放する『鍵』だ」

「―――…」
ジムは帽子を被り直し、パラドックスは説明を続けた。
「つまり、オリュンポスで封印を解いて、再び電脳世界を『混乱させる』つもりだろう…」

title:切る体
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