そのほか | ナノ



部活も終わった真っ暗な帰り道。
「たとえばの話をしよう」と、先輩は俺の手を握りながら伏し目がちにそう言った。


「あたしがいまからいうたとえばに、君はいいか悪いか答えるの。いいね」
「うん、わかった」


「たとえば、あたしと利央の家が近所だったら」
「あーいいかも。朝一緒に学校行けるし、帰りも家まで一緒だし」
「たとえば、利央の誕生日とあたしの誕生日が一緒だったら」
「ソレもいいかも。先輩と同じ日に生まれたとか、奇跡だよねェ」
「たとえば、利央とあたしが同じ学年だったら」
「サンセー。3年間一緒にいられるし、修学旅行とかも一緒にまわれる」


「全部、そうだったらいいって思う?」
「うん。思う」


「でも、よく考えて利央。あたしたちがいまこうしていられるのって、偶然の重なりでしょ?」
「……?」
「たまたま利央の家から遠い家、たまたま違う誕生日、たまたま利央より一年先に生まれた。でも、そうじゃなかったら、あたしたちは出逢わなかったかもしれないんだよ」
「……そうなのかなぁ?」
「きっとそうだよ。あたしは、利央より遠い家でも、違う誕生日でも、違う学年でも、全然いいよ。いまが幸せ」


「ねぇ。先輩」
「なにかな? 利央くん」
「次も先輩は、オレの先輩として生まれてきてよ」
「え?」
「そんで、オレの家より遠い家で、オレとは違う誕生日に生まれて。そんで、また桐青入学してよ」
「どうして?」
「また先輩がオレの先輩として生まれてくれたら、オレは一年遅れて生まれて桐青に入ってまた先輩の後輩になって、また先輩をすきになるからさ」


「利央は明日が誕生日だったっけ?」
「うん、そう」
「じゃあ、前祝いのプレゼントをあげようか」
「ほんと? なにくれんの?」
「利央があたしに幸せをくれるから、あたしも幸せをあげるよ」


ちょっと屈んで、目を瞑ってごらん? と先輩の甘い声。どきりと心臓が鳴って、オレは目を閉じた。――もしかしてちゅー!?とか期待する。先輩のにおいがする。飴みたいなにおいだ。かり、と小さな音。唇に押し付けられたのは飴玉で、悪戯っぽく笑う先輩にオレはちょっと恥ずかしくなって。


「せんぱいなんてだいすきだ、ばか!」って、叫んだ。





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20101020 Hono

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