一枚一枚花弁を剥がすように、風丸の手が私の着物を掴み脱がせた。その相手との初めての床入りと云うものは何度経験しても―何度、と云っても数える程しか無いが―慣れないものだ。風丸の初な反応や顔つき、上擦る声にこちらがつられるのもあるだろうか。私はされるがまま、風丸が脱がせ易いよう肩を動かす事だけをして、恥じらうように目線を泳がせる。そして決して恥じらいが無い訳ではない。

「綺麗な肌だな。傷一つ無いのか」

「傷物なら貴方に抱かれないわ」

「…そうか」

襦袢だけを残し、外気に曝された首筋に風丸が顔を埋める。まるで赤子が吸い付くように、唇をすぼめて赤い跡を残す。すると風丸は満足げに微笑んで、行為をぴたりと止めた。何故?そう問えば、今日は酔いが回ってしまった、と答えた。それが私にとってはひどく気に入らなかった。花魁として確立した立場を持ち、床入りともなればどんな男も抱きたがる。それが私のはず。しかし、この男はここで私を投げたのだ。

「…もういいわ」

「悪いな」

「私、帰ります」

ありがとう、と風丸が私に金の入った巾着を渡した。金で自分の失態を流すつもりなのだろうか、私はそれを受け取らず、座敷を後にした。私の部屋で待っていた春奈がひどく驚いていたが、私が機嫌の悪いのを察してすぐに白湯と、布団を用意してくれた。