ぎゅっと握っていて





「あーっ、染岡ずりーよ!」

「早いモン勝ちだろ!」

「ジャンケンじゃ最弱のくせによー」

「ああ、確かに!」

合宿所内には絶えず笑い声が続く。まるで皆が兄弟だ。それを見守るマネージャー達はお姉さん。そして、それすらも見守るキャプテンは、お父さん。

「守はさ、一番子供っぽいように見えて一番大人だと思う」

「なんだよ、いきなり」

食堂で一人水を酌んで飲んでいた守の隣の席に座りそう言うと、守は目を丸くしてから苦笑した。ほら、今の立ち居振る舞いだってどこか落ち着いてる。サッカーやろうぜ!の時のはしゃぎぶりが嘘のようで、慈愛に満ちた瞳で皆を見ているのだ。

「一番、皆の事見てる」

監督にすら推し量りきれない皆の繊細で深い心を、明るい笑顔で全て照らす。不動君の過去も基山君の今も豪炎寺君の未来もみんな守が優しく包み込む。

「じゃあ、俺の事は深緒が見ててくれよ」

守がテーブルの下でそっと私の手を取った。大きな、男の子らしい手。私だけでなく、皆を包み込む、手のひら。
この手が傷ついた時は私がこの手を包み込む。この手が寂しがっていたら、私の手と手を繋ぐ。それって、なかなか愛だなぁと、守と二人で浸ってみたりするのだ。



101214